- 著者
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黒田 誠司
塩谷 猛
南部 弘太郎
渡邉 善正
和田 由大
山田 太郎
内間 久隆
島田 裕司
- 出版者
- 日本臨床外科学会
- 雑誌
- 日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.1, pp.82-86, 2014 (Released:2014-07-31)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
1
症例は33歳,女性.嘔気・嘔吐を主訴に来院.31歳時,他院で帝王切開の手術歴があった.腹部単純X線検査にて骨盤内にX線不透過性の糸の塊様陰影を認めた.また,CT検査では小腸の拡張と鏡面形成を認め,下腹部小腸内にX線不透過性の糸状のものを含む3.5cm大の腫瘤様所見を認めた.腸管内異物に関与した閉塞性イレウスと診断し,同日,手術を施行した.腹腔内は小腸が約20cmに渡って一塊となり強く屈曲していた.剥離すると同部位の小腸が穿孔しており,その口側腸管内に固形物を触知した.固形物を含めて一塊となった小腸を部分切除した.固形物はX線不透過糸入りガーゼであった.術後の腹腔内異物は人為的な合併症であり,まれに敗血症・イレウス・腸穿孔を起こすことがあるため注意を要する.本症例は過去の手術の際に腹腔内に遺残した医療用ガーゼが腸管内に迷入したものと考えられるが,文献的にも珍しく,また発生起序の観点からも興味深い症例といえる.