- 著者
-
島袋 梢
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
本研究では、デング熱感染症の発生に影響を与えると考えられている気象を解析し、影響を与える特定の気象パターンを見つけだす事を目的としている。特に、デング熱媒介昆虫の生態学的特徴から、本研究では新たに、無降水も影響を与えていると考えている。本年度は、昨年収集したデング熱が流行しているアジア地区を中心とした気象データを解析した。最初に参照した気象データ(日本の気象業務支援センターのデータ・アメリカ海洋大気庁(以下:2次データ))は欠損値が多く、予想に反して2次データを用いての解析が難しい事が分かった。そのため、デング熱患者の疫学データと同地域から直接データを入手し、最終的にはカンボジア国の7地域最大15年の気象データ(降水量・温度・湿度)を用いて解析をおこなったところ、月や年平均の降水量・気温・湿度の大きな相関は見られなかった。特に、本研究で仮定している無降水との関連性も、月別の無降水日数で検討したが大きな影響は見られなかった。その結果を元に問題点を検討したところ、降水量の観測地点と患者発生地点の距離が影響している可能性が考えられた。その仮説をもとに、降水量がどの程度の距離間まで同じ降水パターンを示すか検討することとした。国内の詳細なアメダスデータを基に、平坦な地域で降水量が類似パターンを示す限界が約30キロ圏内であることが推定された(地理的特徴などによっても異なる)。一方で、国内でのデータが海外でも同様の傾向がみられるかを検討するために、シンガポール国にて実際に雨量計で計測を行ってみたところ、30キロ以内のシンガポール国内の観測データを比較したところ、類似性がみられないことが分かった。その原因は熱帯の気象変化が亜熱帯地域と比較してより多様性があることが考えられたことから本研究のように降水量のパターンを調べていく場合、観測地点は30キロマスより小さいレベルで参照することが今後必要になるとの新たな課題が考えられる結果となった。