著者
吉田 英利佳 崎山 智樹 片平 浩孝
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-48, 2023 (Released:2023-04-27)
参考文献数
26

国立公園では,利用者の増加に伴い野生生物とのトラブルや環境悪化など様々な問題が生じている.今回我々は,大雪山国立公園内の岩塊堆積地に生息するエゾナキウサギ(Ochotona hyperborea yesoensis)の生息地において,散乱しているごみの存在に気づいた.そこで利用客が多く訪れる生息地を対象に,ごみの数や品目を明らかにすることを目的として,目視による回収調査を実施した.2021年7月30日から8月6日にかけて,大雪山国立公園内の5地点(十勝岳望岳台探勝路・駒止湖・東ヌプカウシヌプリ・白雲山・岩石山)で計11.2時間(平均2.2 h/地点)探索し,合計26個のごみを発見した(発見効率2.3個/h).これらのうちプラスチック製品が多くを占め,空き缶やタバコの空き箱も含まれた.ごみは岩の隙間に落ちているケースが多く,いずれもエゾナキウサギの観察を目的としたレクリエーション時に由来すると推察された.20年以上の長期にわたり残存し続けてきたと思われる缶ごみもあり,周辺環境へ化学物質が溶出している可能性も疑われる.今後のより良い公園利用のために,関係行政主導の定期的な清掃や利用者意識を高める働きかけはもちろん,ごみに気づいた者が率先して持ち帰るような互助的行動の普及が望まれる.