著者
稲垣 耕作 嶋 正利
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-11-18

アトムからビットへの革命という視点から, 情報パラダイムに幾つか検討すべき側面を付け加える。本論文の立場は, アトムとビットは単に対立概念でも無関係概念でもなく, その間の密接な関係を見出すことが情報パラダイムに大きな重要性を付け加えるとのものである。われわれの理論研究は, 物質保存則と計算万能性が自己増殖性によって橋渡しされるとのもので, 物質パラダイムと情報パラダイムにおける根本概念が生命科学でつながれるとの物質・情報・生命の三角形を構成する。このような理論は自然科学パラダイムの情報・生命シフトを予感させるとともに, 従来の物質の物理学で体系化しきれない自然の学を示唆する。ただ情報パラダイムは物質パラダイムの測度でとらえきれない問題を含み, そのような数理が経済や著作権問題を含めた今後の広範な社会の諸問題に影響していくものと思われる。
著者
稲垣 耕作 嶋 正利 上田 〓亮
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.6-13, 2002-10-20
被引用文献数
3

漢字認識技術は,4半世紀にわたって,正解率99.9%の壁を破れずに停滞してきた。本論文はその困難な壁を破り始めたことを告げる最初の論文である。本論文では,パターン認識技術を複雑系進化という観点から見直すという立場からの考え方を述べる。半導体集積回路の集積度はMooreの法則のいう18ヵ月に2倍の向上を続けてきたが,現在はさらなる機能上のイノベーションを必要とする段階にさしかかっていると思われる。高度なパターン認識と人工知能技術によって,言語情報処理など実世界における情報文化に一層近い機能をコンピュータに付与することが1つの道であろう。我々の実験システムは印刷漢字を対象として,現在,基礎実験段階では単一フォントで99.999%以上の認識率を達成している。