著者
稲垣 耕作 嶋 正利 上田 〓亮
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.6-13, 2002-10-20
被引用文献数
3

漢字認識技術は,4半世紀にわたって,正解率99.9%の壁を破れずに停滞してきた。本論文はその困難な壁を破り始めたことを告げる最初の論文である。本論文では,パターン認識技術を複雑系進化という観点から見直すという立場からの考え方を述べる。半導体集積回路の集積度はMooreの法則のいう18ヵ月に2倍の向上を続けてきたが,現在はさらなる機能上のイノベーションを必要とする段階にさしかかっていると思われる。高度なパターン認識と人工知能技術によって,言語情報処理など実世界における情報文化に一層近い機能をコンピュータに付与することが1つの道であろう。我々の実験システムは印刷漢字を対象として,現在,基礎実験段階では単一フォントで99.999%以上の認識率を達成している。