著者
嶋根 歌子 江口 昭子 竹内 美智代
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.169-178, 1997-03-31
被引用文献数
1

女子大学生22名を対象に,姿勢に対する認識調査,身体計測,及びモアレ縞等高線写真による背面形状の検討により,日常の習慣が背面形状にどのような影響をおよぼし,さらにその個人差,左右差がどこに生じているのかを明らかにした。主な結果は次の通りである。1.姿勢に対する認識調査結果 普段姿勢を気にしている者が61.5%で姿勢に対する関心が高くかつ,姿勢が悪いと自覚している。利き腕は,89.7%の者が右利きである。上肢は,右側が動きの中心でありかつ,支点であり,下肢は,体重を支えながら動作を行う機能を有することから,行動を起こす側が右脚で,支点は左脚であると解釈できた。2.人体の形態及び背面の特性 1)マルチン計測器による人体計測 本実験の被検者の平均的体型は,膝が高く位置し,背部や上腕の脂肪量が多く,全体的にふっくらしている。体重,皮下脂肪にややバラツキが,殿部後突角度に著しいバラツキがあり,厚みや背面突出度,脊柱の弯曲に個人差があることが明かとなった。2)足部及び足底面積の計測結果 22名の平均は,足長右22.84cm,左22.99cm,足幅右9.28cm,左9.30cm,足囲右22.49cm,左22.45cm,母趾角度右12.05度,左13.0度であった。全国平均と比較すると,今回の結果はすべての項目で大きい値となった。左右差を見ると,足長,足幅,母趾角度では左足が大,足囲のみ右足が大であった。立位時床と接触した足底面積は,右98.46cm^2,左99.17cm^2,左足が約0.72%大であった。体表面積に対する両足底面積の割合は,約1.3%にすぎなかった。3分割した足底部分の面積が最も大である部分は,a次いで,c,bの順で,右側が左側よりやや大きく,趾先部位や土踏まず部の個人差が考えられた。3)モアレ縞等高線写真による背面形態の計測結果 正中線における腰部角度は,殿部最大突出長と,最突出長はその部位の角度と相関が認められた。肩甲部,殿部ともに右側が上方の者(I)が最も多く11名,次いで両部ともに左側が上方の者(II)7名,肩甲骨は左が上方で,殿部は右が上方の者(III)4名であった。アンケート結果の,上肢は右側が利き腕であり動きの中心で,左腕に荷物を持ったり掛けたりすること,下肢は左足を支点とすることが,右上がりで左に傾いた背面を形成すると考えられた。正中線の胸椎,腰椎の弯曲を基準にして分類した結果,中間型であるMM型は,13名で約60%,次いで腰部が平らなMS型4名,背部が平らなSM型2名,背部弯曲の強いLM,LS型は各1名,背部腰部共に平らなSS型は1名であった。20代前半の女子では,中間群が多数を占めるものの,わずかではあるが背部での弯曲の強い者が出現していた。背面形態と関係の深い項目であると思われる,前述の肩甲骨及び殿部の突出角度及び突出長と左右の肩傾斜角度,背部皮下脂肪厚をもとに,主成分分析を行い,分類した。その第1主成分は人体の肥満度,即ち,皮下脂肪の厚さや殿部の突出を示し,第2主成分は,肩部の大きさ,即ち,肩のあがり方や肩甲骨の突出を示した。
著者
嶋根 歌子 長谷川 寛子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-108, 1994-03-31

高校の学校指定靴の実態とその問題点を明らかにする為に,女子高校2年生122名を対象として調査を行った。さらにアンケートに協力してもらった高校生の内40名を被検者として,立位時足部測定と足底圧分布の測定を行い,足型と靴型の形態的な適合性を検討した。結果を要約すると次のとうりである。I靴に対する意識と履用実態1.足幅サイズについては高校生122名中108名(87.8%)が「不明」と回答しており長さに対する認識に比べ幅についての認識が非常に低い。2.履用されている学生靴の型は「普通C型」(45.6%)と滑り止め付き底の「デラックスC型」(44.8%)で,「C型」が約90%と大多数を占め,好まれている型と思われる。3.購入時の状況は前の靴が古くなったり壊れた為など,何等かの問題が出た為の買い換えが大半を占めた。購入してからの履用期間は回答があった83名だけで平均を出すと約9.8カ月となった。靴になんらかの修理加工をした18名は全員がC型を履用し,中でも普通C型が12件で多い。4.現在トラブルがある者は,19名。ストッキング着用時期20名60.5件,ソックス着用時期に26名74.5件となる。合計でも全体の45.5%にあたる56名の者が何らかのトラブルを経験し,件数では154件にも上る。トラブルは踵部,足部先端部やアキレス腱部に集中している。5.学生靴への意見・要望では機能性関連の不満を訴える者が最も多く,その中でも耐久性の不足を指摘する意見が19件にも上った。ついで履き心地関連が15件であった。
著者
嶋根 歌子 藤原 和歌子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.217-227, 2000-03
被引用文献数
1

寝室の温湿度条件は寝具をとうして寝床内気候に影響し,睡眠の質的レベルに大きく関わる。特に近年の暑熱環境下では快適な条件は得られず,冷房機による調節でより安眠環境を得る家屋が増えてきている。一方環境問題や省エネルギー志向あるいは冷えによる体調不良が問題となり健康志向が高まるなかで,冷房に頼らない,寝室環境や寝具の工夫及び改善が求められている。本研究は,昔の人の知恵を借り,敷寝具の工夫で暑熱を和らげられるかという観点から,寝床内気候,衣内気候の計測と共に,睡眠中の寝姿勢や体動から睡眠の質を捉えようと試みた。主たる結果は,次ぎの様である。1.目覚め感と体動回数との関係は,"ゴザ"の方が眠れたと回答した被験者の体動回数が,通常使用している"ふとん"に比べ少なかった。一方,"ゴザ"の方が眠れなかったと回答した者は普段柔らかいふとんに寝ており,ゴザの表面が硬いことにより,頻繁な体動を繰り返し,身体が不安定で眠りが阻害されたと考えられる。2."ゴザ"を敷くことにより仰臥姿勢がやや減少する一方,側臥姿勢が増加する傾向にあった。一晩中にとった最も長い保持時間は,"ゴザ"の方が長く,平均54分(標準偏差14.16)であり,ふとんは平均43.8分(標準偏差14.24)であった。3."ゴザ"の衣内温度は,就寝1.3時間後に約36℃の第1のピークを示し,次いで3時間,5時間後にピークを示した。衣内湿度も衣内温度のピークと同時期に高湿となった。寝姿勢はこの直後仰臥位から背を起こしたり,側臥位に変化した。寝床内温度は,34∿35℃にあったが,"ふとん"の方が高値を示し,特に101∿200分後に36℃となった。畳間も,"ふとん"の方がやや高値で推移した。相対湿度も,温度と同様,"ふとん"の方が高くなった。