著者
嶋津 怜那 宮口 雨音 五十嵐 大哉 能見 祐理 松本 均
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

目的:アントシアニン(AC)を経口摂取することで様々な機能性が報告されており、その中にアルツハイマー型認知症予防効果がある。しかし、ACは摂取後、体内で各種フェノール酸へと代謝されることが知られており、この効果に寄与する活性成分が特定されていない。そこで本研究では、ACおよびAC由来の代謝物とされ、尿中で検出される各種フェノール酸に関して、血液脳関門(BBB)の透過性を比較することで、AC投与時の有効成分の探索を行った。方法:雄性Wistar RatにカシスAC抽出物あるいはイチゴAC濃縮粉末をそれぞれ経口投与し、投与前、投与後0~4h, 4~8h, 8~24hに尿を回収し、尿中のACおよび代謝物をLC-MSMSで定量した。また、投与後2, 18hにおける脳中のACおよび代謝物もLC-MSMSで分析した。続いて、Wistar Rat由来のBBBキットを用いてACおよび代謝物のBBB透過性を検討した。結果および考察:カシスAC抽出物およびイチゴAC濃縮粉末を投与したラットの尿からは、ACおよび代謝物として3,4-Dihydroxybenzoic acid (PCA), Caffeic acid, Vanillic acid, Gallic acid, Ferulic acid, Syringic acid, 4-Hydroxybenzoic acid(4-HBA), 3-(4-Hydroxyphenyl)propionic acid(HPPA), 2,4,6-Trihydroxybenzaldehyde(PGAldehyde), 2,4,6-Trihydroxybenzoic acid(PGAcid), Hippuric acidが検出された。これらの化合物は投与前の尿中にはほとんど含まれていなかった。そのうちカシスAC抽出物投与のラット脳組織中には、Gallic acidおよびHippuric acidが、イチゴAC濃縮粉末投与のラット脳組織中にはAC、4-HBA, PCA, Hippuric acid, そしてHPPAが存在することが分かった。これらの化合物を中心にBBB透過性を検討したところ、ACと比較してHPPAなどの一部のフェノール酸におけるBBB透過性が高いことが分かった。このことから、ACが体内で変換されて様々なフェノール酸となり、効果を発揮する可能性が示唆された。