著者
嶋田 奈緒子
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(ZD1839)は肺癌における分子標的治療薬として使用されているが、その副作用として急性肺障害・間質性肺炎の発症があり、この急性肺障害の発症機序の解明や危険因子を同定することは我々呼吸器・臨床医にとって急務である。我々は昨年までに、AKR/J系マウスにイレッサを投与しneutrophilの集積が肺胞壁のcapillary内に起きていることを確認した。Macrophageの集積はneutrophilに比べて顕著ではなかった。また老化促進マウス(senescence-accelerated mouse, SAM)にもイレッサを投与しその肺組織に及ぼす影響も検討した。SAMの元々のストレインはAKR/Jマウスであるにもかかわらず、SAMPlはイレッサ投与によってもAKR/Jマウスと比較してneutrophilの集積はみられなかった。今年度はマウス・ストレイン間のイレッサ感受性の違いを検討する為に、AKR/Jマウス、C57BL6マウス、NZWマウスにイレッサを投与して検討した。当初はマウス・ストレイン間でイレッサ感受性に違いのあることを予想していたが、今のところ3ストレイン間で炎症性細胞の浸潤などに大きな違いは認められていない。また肺組織での発現解析においても現在のところ、大きな違いは同定できていない。しかしまだマウスの実験匹数やイレッサの条件検討などが充分ではなく、今後はさらに検討を重ねる予定である。これら疾患モデルにおける遺伝子発現プロファイルの違いやgenetic variationを検討することは、今後イレッサ急性肺障害の危険因子・予測因子の解明の糸口につながる可能性があると思われる。