著者
嶋田 貴子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

子宮頸がんの腫瘍マーカーとしてSCCがあるが、慢性腎不全患者などの患者では偽陽性を示すことがある。そこで血漿中のHPVDNAを定量し、それが子宮頸がん発症の診断や再発のマーカーとなるか否かについて検討した。2007年4月から2008年9月までに当院を受診し、HPV16陽性の子宮頸部異形成または子宮頸癌(扁平上皮癌)と診断された43名を対象とした。DNA定量はSYBR Greenを用いたリアルタイムPCRで行った。子宮頸管内HPVDNAの有無はインフォームドコンセントを得た女性に対しHybrid Capture法を用いて検査した。本研究は当院倫理員会の承認を得て行った。HPV16陽性子宮頸癌患者20例中6例(30.0%)の治療前血漿中からHPV16DNAを検出することが出来た。臨床進行期分類(FIGO分類)のI期よりII期やIV期の症例の方が血漿1mlあたりのHPV16 E6E7 DNAコピー数が多い傾向が認められた。また腫瘍マーカーであるSCCAが正常範囲であっても血漿中にHPV16 DNAが検出された例があった。子宮頸癌が浸潤または壊死をおこすときにDNAが切断されて断片化し、血漿中のHPV DNAの断片として認められるのではないかと考える。術前のSCC値が陰性の子宮頸癌患者に対して、血漿中のHPVDNA定量が低侵襲なマーカーとして利用できることが期待できる。