著者
嶽村 智子
出版者
奈良女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度に引き続き、多様なモデルに対応する確率過程の構築を目指し、その性質を研究することを目的とし、研究を行った。昨年度の成果をもとに、斜積拡散過程と調和変換に関して研究を行った。一次元拡散過程と球面上のブラウン運動によって構成される斜積拡散過程を考察し、コンパクト多様体の内部を運動し、境界ではジャンプや消滅が起こりうる過程に対する再帰性の判定法について結果を得る事ができた。これは、昨年度取り扱った極限定理で現れる極限過程に対応する過程についての再帰性の判定法である。斜積拡散過程に対する再帰性については、今までも議論はあったが、斜積拡散過程を構成する過程と斜積を構成する測度の性質から斜積拡散過程の再帰性を判定するものであり、斜積拡散過程の性質から斜積拡散過程を構成する過程についての性質を得るというものについては研究がなされていなかった。本研究では、一次元拡散過程と球面上のブラウン運動との斜積拡散過程を取り扱う事により、一次元拡散過程の再帰性と斜積拡散過程の再帰性が一対一に対応していることがわかった。この結果は、球面上のブラウン運動という非常に良い性質をもつ過程を取り扱ったことにより得る事ができるが、球面上のブラウン運動に限らず、コンパクト多様体に関しても同様の結果を得ることができる事が予想される。これらの研究により、多様なモデルを取り扱うことができ、力学モデルの分野において応用が期待される。また、調和変換と呼ばれる場に依存する確率過程の変換について研究を行った。