著者
川上 暢子 菅野 重範
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.161-165, 2023-06-30 (Released:2023-07-18)
参考文献数
9

原発性進行性失語 (以下, PPA) は現在の診断基準では非流暢性 / 失文法型PPA (以下, nfvPPA) , 意味障害型PPA (以下, svPPA) , ロゴペニック型PPA (以下, lvPPA) に分類されるが, これに当てはまらない症例があり, その 1 つが進行性語聾 (または聴覚失認) の 1 群である。語聾では言語音の音韻認知が障害されており, 中枢神経の聴覚領域の損傷が原因とされる。神経変性疾患を背景とする PPA に併存する進行性語聾は, 背景疾患の種類により障害されやすい聴覚経路・領域が異なるため, 主要な聴覚処理障害および聴覚症状も nfvPPA, svPPA, lvPPA のそれぞれで違いがあることが報告されており, 本稿では最新の知見についてまとめた。また, 語聾の診断の基礎である言語音認知の評価は言語機能の影響を受けるため, PPA 症例では正確な評価が難しい場合も多い。評価方法の 1 例として, 基本的な聴覚機能および聴覚的言語理解について, 複数の言語・聴覚課題を組み合わせて評価を試みた症例を提示する。