著者
川上 正也
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.603-616, 1999-08-30
参考文献数
95

体液性感染防御因子としては,微生物の表層構成物質を分解する酵素やそれを穿孔する殺菌性オリゴペプチドなどが知られていた。しかし体液性因子の中では抗体が最強であるという認識があった。抗体それ自身の防御力は限られているが,それは補体活性化をすることによって貪食促進や殺菌などの力を発揮して,からだ全体の防衛機能を動員する。1980年代に私たちは強力に補体を活性化して殺菌するレクチンRa-reactive factor (RaRF)を見出だし,補体を活性化するレクチンの存在が,抗体に並ぶ防御因子としてクローズアップされるようになった。私たちはこの因子が新しい補体活性化経路(レクチン経路)を活性化することを見出だし,その蛋白構造を明らかにし,遺伝子のマッピングなどを行った。現在では世界各国で研究が進められ,RaRFの構成蛋白のひとつをコードする遺伝子MBLが異常になると易感染症をはじめ種々の疾患を引き起こすことが明らかになって,感染防御におけるRaRFの重要性が注目されるにいたった。ここでは,私たちの研究成果に加えて,これらの最近の知見を紹介する。