著者
川上 正道
出版者
政治経済学・経済史学会
雑誌
土地制度史学 (ISSN:04933567)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 1963-10-20

われわれは当面,日本資本主義の再生産構造を解明することを課題としている.これに応えるためには,マルクスの再生産論を正しく把握しておくことが,理論的な基礎として必要であるが,その実証的な資料という点では,政府推計の国民所得および産業連関表を重視すべきであろう.ところで,これらの政府の統計は,主観的な効用価値説にもとづいて作成されているから,客観的な労働価値説の立場からこれを正しく再編成したうえで利用しなければならない.つまり,マルクスの再生産論に立脚して,国民所得と産業連関表を正しく位置づけ,それを基準として政府推計の国民所得および産業連関表の歪曲された性格をとらえておく必要がある.われわれは,以下に,マルクスの拡大再生産表式を手がかりとして,この点を明確にしようとするものである.