著者
羽田 詩子 山村 理 川内 大輔 藤井 輝久
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.16-25, 2006-01-10
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

目印: 歯科臨床において審美性と機能の調和が求められ, オールセラミッククラウンによる歯冠修復が普及している. 修復物の製作において, 天然歯の形態と色調の再現が重要である. しかし, 透明性が高いコーピング材料では, 支台歯の色調がコーピングの色調に影響を与える. そこで, 3種類のオールセラミック材料, Empress, Empress2 (IVOCLAR VIVADENT), Procera AllCeram (Nobel Biocare) について, 支台歯の色調がコーピングの色調に与える影響を評価した.<BR>方法: 上顎左側中切歯にEmpress (TC1), Empress2 (100), Procera AllCeram (ホワイティシュ) のコーピングを厚さ0.5mmに製作した. 支台歯はIPS Empress System (IVOCLAR VIVADENT) のダイマテリアル6種 (ST1, ST2, ST3, ST5, ST8, ST9), 金銀パラジウム合金, 金合金, 実験的黒体を用いて製作した. 各支台歯に3種類のコーピングを装着し, 歯冠頬側中央部を高速分光光度計を用いて測色し, L*a*b*表色系にて比較検討した.<BR>結果: 彩度の高いほうから, Procera, Empress2, Empress, 明度の高いほうからEmpress2, Procera, Empressの順であった. Dryの条件 (支台歯とコーピングを乾燥し装着した条件) あるいはWetの条件 (支台歯とコーピングの間に水を介在させ装着した条件) 下で測色した場合を比較すると, コーピングの色調は, 特に彩度に影響を及ぼした. Wetの条件で測定したST1を除く全ての条件について, 支台歯色との色差はEmpress2, Procera, Empressの順に小さくなることがわかった.<BR>結論: 二支台歯の色調を反映する順序はEmpress, Procera, Empress2であった. 臨床および技工操作においてはWetな条件で色調を観察および測定することが望まれる.