著者
田中 茜 川口 岳晴 今留 謙一 原 暁
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.277-282, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
11

【背景】EBウイルス関連リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)はEBウイルスが感染したリンパ球が体内で増殖する疾患の総称であり,稀少かつ難治性の疾患である。【症例】79歳男性。2021年6月にBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチンを接種し,翌日に発熱し,2週間以上持続したため当院受診した。血液検査で肝酵素上昇,汎血球減少,凝固異常,フェリチン,sIL-2R高値を認め,全身CTで肝脾腫を認めた他リンパ節腫脹はなかった。骨髄生検,肝生検とランダム皮膚生検を施行したが悪性所見はなかった。一方末梢血EBV-DNAは5.19 Log IU/mlと高値で,EBV感染細胞はNK細胞であり,EBV-NK-LPDと診断した。Prednisolone, immunoglobulin大量療法,etoposideを投与したが効果がなく2021年9月に永眠した。【考察】BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後の発熱を契機に診断したEBV-LPDの1例を経験した。ワクチン接種後に発熱が遷延した場合EBV定量検査を実施し,高値の場合感染細胞同定解析など詳細な解析による鑑別が必要である。