著者
大浜 和憲 土田 敬 矢崎 潮 田中 松平 長尾 信 亀水 忠 川口 雅彦 俵矢 香苗 清水 博志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.776-783, 1996
被引用文献数
4

胆道穿孔を合併した先天性胆道拡張症4例を報告した.性別は男児1例,女児3例で,年齢は13日から4歳であった.形態は嚢腫状拡張3例,紡錘状拡張1例であった.主脈は腹痛,発熱と嘔吐が3例に,腹部膨満,黄疸と意識障害が1例に認められた.全例とも炎症所見はそれほど強くなかった.直接ビリルビンの上昇が1例に,高アミラーゼ血症が2例に認められた.発症から手術までの期間は2日から13日であった.初期治療として腹腔単ドレナージ術が2例に,嚢腫十二指腸吻合術と外胆瘻造設術が各1例に行われた.全例,1ヵ月から5年後に根治術を受けて生存している.自験例4例を含む本邦報告例93例の検討から,症状は嘔吐が最も多く,腹部膨満,腹痛,発熱がそれに次ぐ.小児の急性腹症で黄疸や肝胆道系酵素・膵酵素の上昇などがあれば,腹部超音波検査を必ず行い,胆管の拡張と大量の腹水貯留があれば胆道拡張症に胆道穿孔を合併したものとほぼ診断できる. 初期治療は外胆道瘻造設術が妥当である.先天性胆道拡張症で胆道穿孔をおこす原因は胆道内圧の上昇と膵液の逆流による胆管壁の荒廃の2つが考えられるが,嚢腫状拡張よりも紡錘状拡張の方が穿孔を起こしやすいことから,後者の方がより大きな因子といえる.また穿孔をおこす年齢は4歳までがほとんどで,胆道壁の未熟性も穿孔に関与していると考えられる.