著者
藤本 泰文 川岸 基能 進東 健太郎
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-25, 2008 (Released:2017-11-10)
参考文献数
37
被引用文献数
9

伊豆沼・内沼と集水域内の流入河川や池で魚類相を調査した.合計12科36種の魚類の生息を確認した.集水域の魚類相は,東日本固有種であるゼニタナゴ,タナゴ,シナイモツゴやギバチなどを含む,純淡水魚類を中心に構成されていた.開放水域である伊豆沼・内沼と流入河川では,かつて高密度に生息していた在来の小型魚種の生息数は僅かであった.一方,外来魚であるオオクチバスは数多く生息し,その影響が示唆された.池ではオオクチバスの生息の有無によって,魚類相に大きな違いがみられた.在来魚の生息種数は,オオクチバスが生息していない池で多かった.これらの池では,ここ十数年の間に伊豆沼・内沼から姿を消した数種の在来種を再確認した.開放水域である伊豆沼や河川の魚類相は,オオクチバスの侵入による影響が著しく,閉鎖水域である池では,在来魚が保存されているケースがあることが示された.本研究の結果は,集水域を単位とした魚類調査が,在来魚の再確認や防除が望ましい外来魚の分布の把握を通じ,その集水域での魚類相の復元に寄与する可能性を示した.