著者
尾山 大知 丸山 智朗 井口 卓磨
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.121-129, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
18

2018 年5 月から2021 年5 月にかけて,関東平野を流れる荒川水系の1 細流において採集されたヒメヌマエビ属31 個体の標本を検討したところ,香港をタイプ産地とする陸封種,Caridina logemanni Klotz & von Rintelen,2014 に同定された.本種は年間を通じて確認され,抱卵個体や稚エビも採集されたため,本生息地において定着・再生産していることが示唆された.加えて,C. logemanni の採集地周辺の観賞魚店で販売されていた5 個体の形態も採集された個体とよく一致していたことから,荒川水系における本種の確認例は,観賞目的で流通していた個体の遺棄に由来すると考えられた.本種には標準和名が与えられていないことから,本報において新標準和名「ホンコンクロオビヌマエビ」を提唱する.
著者
藤本 泰文 速水 裕樹
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.79-83, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
15

宮城県北部に位置する伊豆沼・内沼(38˚43’N,141˚07’E)で,2018 年7 月24 日にタナゴAcheilognathus melanogaster を捕獲した.2006 年以来12 年ぶりの再確認であった.タナゴは東日本の太平 洋側を分布域とする在来種で,宮城県では絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に選定されており(宮城県環境生活部自然保護課 2016),それぞれの地域個体群の保全が重要となっている(Nagata et al. 2018).伊豆沼・内沼では防除活動によるオオクチバスの減少にともない,魚類相の回復が始まっており,今回の再確認は防除活動の成果の一つだと考えられることから,その状況について報告する.
著者
中島 淳
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-37, 2013 (Released:2017-11-10)
参考文献数
41
被引用文献数
1

江戸時代の自然史学者・貝原益軒が1688年から1709年にかけて編纂した筑前国続風土記における福岡県内の淡水魚類に関する記述を精査した.その結果,24分類群(魚類,両生類)についての記述が認められ,少なくとも21分類群については種あるいは属まで同定することができた.また,本書の記録からこの300年間で通し回遊魚であるアユ,サクラマス,サケ,ウグイの生息地が減少していることがわかり,本書が福岡県の過去の魚類相を知る上で重要な資料であることが確認された.
著者
斉藤 憲治 三塚 牧夫 麻山 賢人 藤本 泰文
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.107-120, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
47
被引用文献数
1

池干しによる駆除の2 年後に見られたオオクチバスMicropterus salmoides 稚魚が駆除の失敗によるものか再度の違法放流によるものなのか推定した.繁殖,成長,死亡についての過去の資料を参照しつつ,池干し時の残存個体または違法放流個体のサイズと数を逆算した.池干し時の捕り残しと仮定した場合,全長35cm 程度の成魚であれば8 尾弱または体長14cm 程度の0 才魚であれば 90 尾弱と推定された.池の干し上げの状況からこの数の捕り残しは現実的でない.池干しのおよそ1 年後の違法放流と仮定すると,調査で確認された稚魚が出現するには,全長38cm 程度を約5 尾または22cm 程度を約8 尾が放流されたと推定された.
著者
木村 将士 山口 真明 大森 健策 山崎 和哉 金子 誠也 加納 光樹
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-95, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

要涸沼川とその支川の飯田川において,特定外来生物コクチバスの生息状況調査を行った.涸沼川における採集調査では,2019 年と2020 年の各年の6 月から9 月に,飯田川合流点より下流側の7 地点で仔魚や成魚を含む計228 個体(体長6.3–295mm)が採集された.そのうち1 地点では 2019 年6 月に産卵床で仔魚およびそれらを保護する親魚が採集された.したがって,コクチバスは涸沼川水系で再生産し分布を拡大しつつあると考えられた.
著者
中島 淳 大井 和之 富 充弘 伊地知 告
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.103-111, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
28

鹿児島県奄美群島に属する喜界島において,2018年10月にコイ科の淡水魚であるフナ属を2 個体採集した.採集個体の形態及びミトコンドリアDNA 調節領域の特徴を調査した結果,この2 個体はそれぞれギンブナCarassius langsdorfii およびキンギョC. auratus に同定された.喜界島におけるフナ属の記録はおよそ80 年ぶりとなる.これらはいずれも人為移入に基づくものと推察された.
著者
照井 滋晴
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.91-100, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
15

2011 年1 月から2021 年3 月までのネットオークションにおけるセボシタビラ(2020 年2 月に種の保存法にもとづく「国内希少野生動植物種」に指定)の販売実態を調査し,「国内希少野生動植物種」指定の効果を検証した.その結果,723 件の販売記録のうち5.5%が野生捕獲個体(WC),72.9% が飼育下繁殖個体(CB),21.6%が由来不明個体であった.また,セボシタビラの「国内希少野生動植物種」への指定によって流通を停止させる効果が認められた.しかし,調査期間を通して,流通に占めるWC の取引の割合は,由来不明をWC に含めたとしても小さく,CB と称するものの割合が相対的に大きかったことから,本種に関しては,国内希少野生動物種への指定による販売規制の重要性はそれほど高くないことも示唆された.今後,密漁が増加した場合などには,野外における捕獲等及びその他の商取引が禁止されるものの,特定国内種事業者による繁殖個体のみ商取引を認められるカテゴリー「特定第一種国内希少野生動植物種(特定第一種)」へ移行することも選択肢として検討する余地があると考えられた.
著者
藤本 泰文 星 美幸 神宮字 寛
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.81-90, 2009 (Released:2017-11-10)
参考文献数
13
被引用文献数
13

定期的に調査を行なっていた宮城県北部の溜め池にオオクチバスが侵入した.すぐに捕獲作業を行ない,82個体のオオクチバスを捕獲した.環境調査の記録から,オオクチバスが侵入して13日が経過した段階で捕獲したと考えた.胃内容物を調査した結果,オオクチバスは1個体あたり3.0個体の水生生物を捕食していた.溜め池に生息する水生生物の個体数推定を行ない,オオクチバスによる水生生物に対する捕食数と捕食率を算出した.その結果,オオクチバスは溜め池に生息した13日間で,溜め池に生息する約9,000個体の水生生物のうち,タナゴ1,687個体,トウヨシノボリ400個体,エビ類718個体,アメリカザリガニ267個体を捕食したと推定された.これは生息個体数のそれぞれ37.9%, 31.0%, 35.0%, 21.2%に相当する.侵入初期のオオクチバスによる水生生物への影響を報告した事例はこれまでになく,本研究の結果は,オオクチバスが水生生物を大量に捕食する性質を持ち,今回のように生息する水生生物の約1%に相当する個体数が侵入した場合においても,強い捕食圧を与え,その水域の水生生物を急減させることを示した.
著者
内田 大貴 上手 雄貴 上手 奈美
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-55, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
36

木曽川水系に連なる岐阜県のあるため池において,2022 年に国外外来種であるチョウセンブナMacropodus ocellatus が採集された.本種は, “木曽川水系” としての確認記録が残されているものの,都道府県についての記載はなく,岐阜県内と特定可能な本種の移入記録は無い状況であった.したがって,今回の記録は岐阜県初記録かつ,木曽川水系における約60 年ぶりの採集記録と言える.当県における本種の由来の詳細は明らかでないが,国内では生息数を減らしている一方,希少魚として流通している.生息地の状況やこれらの社会的背景から,確認されたチョウセンブナは個人や養殖業者による意図的な放流個体の可能性が考えられた.さらに,この個体群の周辺地域への拡散も懸念されることから,生息状況だけでなく,拡散状況の把握や早期の駆除が必要である.
著者
旗 薫 小池 花苗 丹野 夕輝 中島 淳
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.15-32, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
26

宮城県で採集されたクレードA に属すると思われるドジョウについて,ミトコンドリアDNA 調節領域による遺伝的特徴と,体型や骨質盤による形態的特徴を調査した.宮城県産クレードA はキタドジョウと同定された下北半島産クレードA と同じ遺伝的集団内の異なる分集団に属すること,眼径や第2 口髭長の体長比は下北半島産クレードA が示す値に近いが,骨質盤の形態は明瞭に異なることなどが明らかとなった.このことから,宮城県産クレードA はキタドジョウとは形態的に区別できる未知の在来集団,もしくは人為的に導入されたドジョウとの交雑集団である可能性が考えられた.
著者
平田 渉 中島 淳 小山 彰彦 乾 隆帝
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-22, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
7

これまで鹿児島県の1 ヶ所の生息地しか知られていなかったサツマキバナガミズギワゴミムシの 2 ヶ所目の生息地を発見した.これは熊本県からの初記録となる.また,両産地での生息環境を調査し,その環境構造の特徴を記録した.
著者
畠 佐代子 新野 聡 富樫 悦夫 上野山 雅子 澤邊 久美子
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.53-62, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
20

宮城県仙台市若林区内において,カヤネズミMicromys minutusの新産地を3ヶ所発見した.新産地のうち,広瀬川左岸河川敷で発見された生息地は,国内における本種の分布の北限として知られる坪沼よりも北に位置しており,新たな北限となる.新産地の周辺は圃場整備や護岸工事が進み, それぞれの生息地が孤立した状態であると推察されることから,生息環境の早急な保全が求められる.
著者
高野 季樹 内田 大貴 山川 宇宙
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.71-80, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
28

カラドンコはベトナム北部から中国東部を原産地とする純淡水魚である.2010 年に茨城県の菅生沼において国内で初めて確認された国外外来魚であり,利根川本流への分布の拡大が報告されている.このような状況下で,東京都葛飾区の利根川水系江戸川で本種1 個体が採集された.本個体の侵入経路として,既知産地から利根運河を介した江戸川への拡散と,既知産地とは独立した新たな人為的導入の2 通りの経路が考えられた.本種は肉食魚類であることから,在来生態系への影響が懸念されている.今後は本種の継続的なモニタリングを実施するとともに,侵入の初期段階での防除の検討が望まれる.
著者
芦澤 淳 藤本 泰文
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.27-40, 2012 (Released:2017-11-10)
参考文献数
26
被引用文献数
4

2010年5月から9月に,小型のため池において,カニ籠,手網,塩ビ管を用いてアメリカザリガニを捕獲した.捕獲個体数から生息個体数を推定した結果,調査開始時における2009年以前に新規加入した個体(以下,大型個体)の生息個体数は,1,886個体と推定された.2010年に新規加入した個体(以下,小型個体)の生息個体数は,3,192個体と推定された.週2回程度の捕獲作業を4箇月半繰り返した結果,大型個体と小型個体は,それぞれ1,885個体,3,176個体捕獲された.調査終了時における大型個体と小型個体の生息個体数は,それぞれ1個体,16個体と推定され,生息個体数を低密度に抑制することができた.ため池内の捕獲とともに,周辺地域からの侵入個体を捕獲した結果,ため池の流入部及び周縁部で,合計1,050個体が捕獲された.以上の結果から,小型のため池においてカニ籠,手網,塩ビ管を用いてアメリカザリガニの個体数抑制が可能であった.ただし,ため池の周辺にアメリカザリガニが生息している場合,侵入防止対策や周辺地域も含めた防除を行なう必要があった.
著者
太下 蓮 伊藤 玄
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.29-37, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
43

2022年に三重県北部において17個体のオヤニラミが採集された.本報告は,三重県におけるオヤニラミの初記録である.ただし,オヤニラミは隣接する愛知県,岐阜県,滋賀県,奈良県,和歌山県において移入されていることから,三重県のオヤニラミについても移入であると考えられた.採集調査では成魚に加えて当歳魚とみられる個体も採集されたことから,調査地ではオヤニラミが再生産しているものと考えられる.
著者
長谷川 政智
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.45-51, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
3

要旨 ミヤケミズムシXenocorixa vittipennisは,本州,四国,九州に分布し,水生植物が豊富な池沼に高密度に生息するが産地は局所的とされている.また,環境省の準絶滅危惧に指定されているがその生活史についての報告は少なく,交尾や産卵行動についての報告はない.本稿では,宮城県の溜池で,繁殖と思われる行動を観察したので報告する.また,幼虫の成長過程を2015 年4 月から2018 年6 月にかけて観察したので報告する.
著者
三内 悠吾
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.73-78, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
13

ヒガシシマドジョウCobitis sp. BIWAE type C の生活史には未解明な部分が多く,産卵環境や仔魚・稚魚の育成環境についても同様である.著者は河川内の浅い水域において本種の卵を採集・確認したので報告する.
著者
浅香 智也
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-90, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
9

要旨 2019 年7 月10 日に愛知県新城市の水路において,スジボソハシリグモDolomedes augusti- virgatus によるカワムツNipponocypris temminckii の捕食を観察した.この水路はコンクリート三面張りで,土砂が溜まり植物が生い茂っていた.捕食の様子は,スジボソハシリグモの上顎がカワムツの頭部に深く食い込み,陸上に引きずり上げていた.
著者
芦澤 淳 長谷川 政智 高橋 清孝
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.83-93, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
24

アメリカザリガニProcambarus clarkii が生態系に及ぼす被害を防止するために,本種の駆除活動が各地で行なわれている.アメリカザリガニの駆除活動においては,餌で誘引する罠を用いた捕獲が一般的に行なわれている.罠に使用する餌には生餌(魚肉、牛レバー)が使用されることが多いが,生餌の価格は高く,保管にコストがかかることが問題である.また,これまでに国内で行なわれた罠の餌に関する研究においては,生餌以外の餌についてアメリカザリガニに対する誘引効果が示されたが,これらの餌には誘引効果や費用の面で課題がある.そこで,本研究では,アメリカザリガニの捕獲罠に使用する餌について,誘引効果や費用対効果がより高い餌を明らかにすることを目的とし,配合飼料(ドッグフード,マス用飼料,およびコイ用飼料)と,従来から使用されている生餌および糠団子の間で,アメリカザリガニに対する誘引効果および費用対効果を比較した.その結果,マス用飼料によるアメリカザリガニの誘引効果は,生餌および糠団子と同程度であったが,ドッグフードの誘引効果は糠団子よりも高かった.また,ドッグフードとマス用飼料の費用対効果は,どちらも生餌よりも高かった.これらの結果から,ドッグフードはアメリカザリガニの誘引効果と費用対効果がともに高い餌といえた.また,脂質含量が少ないコイ用飼料については,ドッグフードに比べて費用対効果がやや劣るものの,誘引効果はドッグフードおよびマス用飼料と同程度であった.以上より,アメリカザリガニの捕獲罠に使用する餌としては,誘引効果と費用対効果の面ではドッグフードが適していたが,油膜の発生による生態系への影響が懸念される場合には,コイ用飼料を使用することで,アメリカザリガニを効率よく捕獲できるだろう.
著者
高野 季樹 内田 大貴
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.81-90, 2023-07-11 (Released:2023-07-11)
参考文献数
25

改良品種である「観賞魚メダカ」については,近年国内における野外放流事例が相次いで確認され,在来の野生メダカの個体群への悪影響が懸念されている.著者らは,千葉県浦安市のビオトープ池において,一般的な野生メダカとは異なる色彩,形態をもつメダカ類44 個体を含むメダカ49 個体を採集した.形態的特徴から,これらはいずれも品種としての価値が低い個体であり,養殖個体群から除去された観賞魚メダカと考えられた.このような観賞魚メダカが流出すると,遺伝的かく乱のみならず感染症や寄生虫の媒介による在来の水生生物への悪影響が懸念される.今後の意図的および非意図的放流防止のためにも,普及啓発が必要である.