著者
川島 伸之
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

歯髄細胞は象牙芽細胞へ分化し象牙質を形成する。骨芽細胞は骨形成細胞である。これらの細胞は硬組織形成細胞としての共通した特性を有する。臨床において、象牙質、骨といった硬組織の誘導を現実に行うために、まずvitroにおいて効率的に分化および石灰化誘導可能な条件について検討した。通常のディッシュを用いた2次元培養においては、硬組織誘導培地を用いない限り硬組織マーカーの発現増加および石灰化結節の形成は誘導できないが、3次元培養することにより、硬組織マーカーの発現増加が観察され、硬組織誘導培地により効率的な石灰化結節が形成された。3次元培養することで、より生体に近い環境で細胞を培養することが可能となったため、オリジナルの硬組織形成細胞としての特性が顕著に表れたものと推察される。なお、3次元培養によりインテグリンシグナルが活性化され、それが分化誘導に関与していることも明らかになった。これらの結果は、生体における象牙質および骨形成のメカニズムの一端を明らかにしてくれるとともに、臨床における硬組織誘導を実現するための布石となりうると思われる。