著者
川島 友李亜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

【目的】<br>ソメイヨシノ(<i>Prunus yedoensis</i>)の開花日の変動は気温と密接な関係にあることが、これまで多数の研究で証明されている。また、近年の気候温暖化による春先の気温の変化に伴って、ソメイヨシノの開花時期はこの50年間に全国平均で5日早まっていることも報告されているが、今後さらに気温上昇が進行すると、サクラを初めとする果樹は自発休眠打破に必要な低温遭遇時間を不足し、発芽や開花の不揃い、生育異常現象が多発する可能性がある。本研究では高知市における気候の変化を明らかにするとともに、気候変動がサクラ(ソメイヨシノ)にどのような影響を及ぼしているかを明らかにする。特に、1961年以降の休眠時期及び開花時期の変化と気温上昇との関連性について調査し、地球温暖化との関連に着目して検討した。<br>【対象】<br>ソメイヨシノの開花日のデータは、全国の気象官署で生物季節観測として行われたもの、気象データはアメダスのデータを使用する。高知県では高知城公園(北緯33&deg;N、東経133&deg;W、海抜高度31m)のソメイヨシノが標本木とされており、開花宣言は標本木の花が5~6輪開いた状態の時に行われる。<br>【方法】<br>1886年から2013年までの高知市の気温変動について調査した上、開花日の経年変化、気温との開花日との相関関係の有無について検証した。<br>【結果】<br>高知市の気温は1980年と2012年を比較すると、夏季(8月)は+2.3℃、冬季(1月)は+0.5℃上昇していた。ソメイヨシノの開花日は1954年から2013年の期間において平均開花日は3月23日、最も早かったのは2010年で3月10日、最も遅かったのは1957年で4月2日であった。年度の推移に伴って1954年から2013年までの59年間で1年あたり、開花日はおよそ0.11日早まっていた。また、1989年までと1990年以降に分けて分析すると、前者は1年あたり0.067日、後者は1年あたり0.277日早まっていた。また、開花日と気温との関係性は3月の月平均気温と開花日の間に最も強い相関が見られた。<br>【考察】<br>高知市の気温上昇は1980年以降に顕著に表れ始めていることがわかった。また、開花日も同様に近年早期化が進んでいる。3月の月平均気温と開花日の間に最も強い相関が見られたことから、ソメイヨシノは開花する約1~2週間前の気温に最も影響を受けるということが予想される。