著者
西村 真吾 山内 克哉 蓮井 誠 山下 裕太郎 鈴木 隆範 川嶋 雄哉 久木 貴寛 伊本 健人 池島 直貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-59_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】足部アーチにおける重要な機能として,接地時の衝撃緩和に働くトラス構造がある.中でも内側縦アーチの低下した障害を偏平足といい,足底筋膜炎やシンスプリントなどの原因になりうるとの報告もある.内側縦アーチの高さと筋力の関係は,アーチが高い程,足趾握力が強いとの報告があるが,影響を及ぼさないとの報告もあり,見解は一致していない.また,足関節周囲筋筋力との関係性を調査した研究もみられない.そこで本研究の目的は,アーチ高率と足部外返し,内返し筋力との関係性について調査し,偏平足に対する新たな治療の一助とすることとした.【方法】対象は,健常成人14名14足(男性7例,女性7例),除外基準は足部骨折や脊髄疾患のある者とした.年齢26.2±5.5歳,体重57.9±9.3kg.アーチ高率は,床面から舟状骨までの高さを実足長で除して100 を乗じた値を用い,計測肢位は立位荷重位で足隔は肩幅とした.筋力はBIODEX SYSTEM4で測定し,角速度60°/sと180°/sにおける足部外返し,内返し最大トルクを算出し体重で除したトルク体重比を算出.また,外返し最大トルクに対する内返し最大トルクの比(以下,IE比)は内返し最大トルクを外返し最大トルクで除して算出し,それぞれの値とアーチ高率との関係を検討.統計処理にはSPSS Version22を使用し,解析はPearsonの相関係数を用いた.【結果】平均値は,アーチ高率:17.2±2.9%,トルク体重比は外返し(60°/s):51.6±13.7Nm/kg,内返し(60°/s):37.5±8.2Nm/kg,IE比(60°/s):0.77±0.23,外返し(180°/s):30.8±5.8Nm/kg,内返し(180°/s):22.6±3.8Nm/kg,IE比(180°/s):0.76±0.18であった.アーチ高率と内返し(60°/s,180°/s), IE比(60°/s)には相関が認められなかった.アーチ高率と外返し (60°/s)(r=-0.66),外返し(180°/s) (r=-0.71)には有意な負の相関,アーチ高率とIE比(180°/s)(r=0.68)には有意な正の相関が認められた.【考察】アーチ高率と外返しトルク体重比(60°/s,180°/s)に負の相関がみられたことから,外返しの作用を有する長・短腓骨筋が内側縦アーチを引き下げている可能性が示唆された.加えて,アーチ高率と内返しトルク体重比(60°/s,180°/s)には相関が認められず, IE比(180°/s)に正の相関が認められたことから,内返しの作用を有する前・後脛骨筋筋力のみが内側縦アーチに影響を与えるのではなく,長・短腓骨筋に対する前・後脛骨筋筋力の比が内側縦アーチに影響を与える可能性が示唆された.後天性扁平足の主な原因は後脛骨筋機能不全とも言われているが外返し筋力とのバランスが重要かと思われる.【結論】60°/s,180°/sにおける外返しトルク体重比が大きいほど,また,180°/sにおけるIE比が少ないほど内側縦アーチが低くなる可能性が示唆された.低アーチを改善させるためには外返し筋力を抑制するような方法やIE比を大きくするような方法が有効かは縦断的な調査が必要かと考える.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得て行い,対象者には書面にて研究協力の同意を得た.