著者
川瀬 貴博 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-13, 2019-04-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
53

腸内細菌叢は、迷走神経刺激、免疫系あるいはホルモン分泌を介して、宿主の脳機能を変化させて行動を調節する。近年、我々は腸内細菌が宿主脳内における遊離アミノ酸濃度にも影響を及ぼすことを報告した。乳酸菌の機能性に関する報告が増す一方で、学習能力に対する役割は不明である。加齢に伴う認知機能不全は、ヒト、イヌまたネコにおいても問題視されている。本研究では、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 2038 及び Streptococcus thermophilus 1131 乳酸菌株を利用したヨーグルトの長期投与が、マウスの空間記憶や大脳皮質における遊離アミノ酸及びモノアミン濃度に及ぼす影響を調査した。その結果、ヨーグルトの長期投与が8方向放射迷路試験における空間参照記憶のスコアを改善し、大脳皮質中のセロトニン、L-アラニン、D-およびL-セリン、L-バリン、L-イソロイシン濃度を増加させた。以上より、ヨーグルトを長期摂取することで、大脳皮質における数種のアミノ酸やセロトニンの代謝が変化し、マウスの空間参照記憶が改善し得る可能性が推察された。
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
川瀬 貴博 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-13, 2019

<p><tt>腸内細菌叢は、迷走神経刺激、免疫系あるいはホルモン分泌を介して、宿主の脳機能を変化させて行動を調節する。近年、我々は腸内細菌が宿主脳内における遊離アミノ酸濃度にも影響を及ぼすことを報告した。乳酸菌の機能性に関する報告が増す一方で、学習能力に対する役割は不明である。加齢に伴う認知機能不全は、ヒト、イヌまたネコにおいても問題視されている。本研究では、</tt><i>Lactobacillus delbrueckii </i><tt>subsp. </tt><i>bulgaricus 2038</i><tt> 及び </tt><i>Streptococcus thermophilus 1131</i><tt> 乳酸菌株を利用したヨーグルトの長期投与が、マウスの空間記憶や大脳皮質における遊離アミノ酸及びモノアミン濃度に及ぼす影響を調査した。その結果、ヨーグルトの長期投与が8方向放射迷路試験における空間参照記憶のスコアを改善し、大脳皮質中のセロトニン、L-アラニン、D-およびL-セリン、L-バリン、L-イソロイシン濃度を増加させた。以上より、ヨーグルトを長期摂取することで、大脳皮質における数種のアミノ酸やセロトニンの代謝が変化し、マウスの</tt><tt>空間参照記憶が改善し得る可能性が推察された。</tt></p>
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。