著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
岡田 浩 鈴木 渉太 西村 亜佐子 池田 裕美枝 阿部 圭子 中山 健夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.11, pp.1275-1279, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Emergency contraceptive (EC) pills are used to prevent pregnancy after unprotected sexual intercourse. Levonorgestrel is an EC pill, which has been only approved in Japan; it is more effective the sooner it is used after intercourse and safe without serious side effects. EC pills are already available at accessible community pharmacies in more than 90 countries around the world. In Japan, citizens have signed a petition calling for the sale of emergency contraceptives at community pharmacies. However, little is known about the thoughts of pharmacists who engage with patients and sell medicines at pharmacies. Therefore, we conducted a web-based cross-sectional survey to determine the level of preparation in community pharmacies and the awareness of pharmacists regarding the sale of EC pills. A total of 1338 pharmacists responded to the survey from November 7, 2020, to December 16, 2020. In terms of the level of preparation for selling EC pills at pharmacies, 1067 (83.9%) respondents cited “lack of preparation of medical questionnaires and explanatory materials”, and 975 (76.7%) respondents cited “lack of knowledge of pharmacists” as the most common reasons that were “barriers to EC pill sales at pharmacies”. In terms of confidence level, only 289 (22.7%) respondents were confident about conducting the necessary checks while administering medicine. On the other hand, 944 (74.3%) respondents agreed to be able to sell EC pills at their pharmacies. The survey revealed that most of the pharmacists who participated in the survey believe that it is possible to sell EC pills in pharmacies.
著者
池田 裕美
出版者
家畜栄養生理研究会
雑誌
栄養生理研究会報 = Proceedings of Japanese Society for Animal Nutrition and Metabolism (ISSN:02864754)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-8, 2018

遊離アミノ酸は、モノアミン同様に神経伝達物質として働くことが知られている。また、L-チロシンおよびL-トリプトファンはそれぞれ、ドーパミンおよびセロトニンの前駆体である。近年、生体内においてL型のみではなくD型アミノ酸の存在についても確認され、D型アミノ酸に関する研究が飛躍的な発展を遂げている。D-セリンはN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸受容体のコアゴニストとして働くことや、D-アスパラギン酸が水晶体に蓄積することで白内障を発症させることも報告されている。これらのことから、モノアミンのみではなくD型も含めた遊離アミノ酸にも行動量制御の新たな可能性を求めた。本研究では、同属でありながら行動量が著しく異なる2種類のハムスターを用いて栄養生理学的および行動特性の差異を解明することを目的とした。
著者
池田 裕美 山口 剛史 小平 桃子 Bahry M. A. Chowdhury V. S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.47-58, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
35

ジャンガリアンハムスター(以下、ジャンガリアン)とロボロフスキーハムスター(以下、ロボロフスキー)はともにドワーフハムスターと呼ばれ同属でありながら、ロボロフスキーはヒトに慣れにくく多動性を示す。これまでの研究により、ジャンガリアンに比してロボロフスキーでストレス感受性が高いのではないかと仮説を立て、多動性とストレス感受性との関連性を解明することを目的とした。野生のドワーフハムスターは群れで生活するために単離ストレスがかかりやすいのではないかと考え、単離飼育を用いた。ジャンガリアンとロボロフスキーの3週齢雄を群飼で馴化した後、群飼と単飼の2つのグループに分けた。3種類の行動試験を実施し、行動量、不安様行動および社会的行動を測定した。その後得られた海馬および小脳のサンプルを用いて、L型ならびにD型アミノ酸およびモノアミンの分析を行い、さらに、血漿中コルチゾール含量の測定も行った。その結果、単飼開始初期の行動試験においては、ロボロフスキーの多動性が不安様行動を反映している可能性が得られたものの、その後の行動試験ではストレスによる影響はみられなかった。このことから、ハムスターに対し単離は弱いストレスであり、両者の行動量ならびに脳内アミノ酸およびモノアミン代謝にはほとんど影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。