著者
中出 美代 川田 尚弘 井成 真由子 原田 哲夫 杉山 由佳 松島 佳子 竹内 日登美
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.131-137, 2021-07-03 (Released:2021-08-04)
参考文献数
34

目的 大学生アスリートを対象に,競技力によって食習慣や食意識,睡眠習慣など生活習慣の管理に差異が見られるかについて,競技力の異なるチームに属する学生の間で比較検討を行った。方法 2016年12月,大学生サッカー部部員を対象に自記式質問紙調査を実施し,18~23歳の111名 (男性) から回答を得た (回収率100%)。調査内容は,食習慣,食意識,健康感,睡眠習慣,朝型・夜型質問紙 (Torsval&Åkerstedt (1980) 版) などである。①朝食摂取頻度,食事の規則性 (②朝食・③夕食),主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度 (④朝食・⑤夕食),⑥睡眠時間,⑦概日タイプ度の7項目について,良好を1として合計点 (1~7点) を算出し生活管理能力得点とした。分析は,競技力の高いAチームと控えチーム (B,C,D) に分け,競技力による食習慣の乱れや食意識と睡眠習慣の差異について,χ2検定およびMann-Whitney U-testなどによって検討した。結果 食習慣では,競技力の高いAチームの方が朝食を定時にとる割合が有意に高く (p = 0.010),主食・主菜・副菜を揃えた食事をとる頻度も高かった。また食意識についても,競技力の高いチームの方が,食事状況や栄養摂取についての評価が高かった。平日の平均睡眠時間は,Aチームが7時間40分,控えチームが6時間52分と50分ほどの開きがあり (p < 0.001),睡眠時間の充足度もAチームの方が高かった。概日タイプ度では,Aチームの方が朝型の傾向を示した。生活管理能力得点の平均得点は,Aチーム4.20点 (公式試合のスターティングメンバーのみでは5.27点),控えチーム2.40点であった。生活管理能力得点と食意識,健康感の間で,生活管理ができているほど食意識が高く,かつ健康と感じているという有意な相関がみられた。結論 競技力の高いチームの方が総じて生活管理能力が高かった。食や健康に対する意識の高さが自己管理能力の高さにつながり,実際に健康感も高まると思われる。食意識を高めるような啓発活動と,基本的な食習慣・生活習慣の改善が,学生アスリートの競技力向上に有効である可能性が示唆された。