著者
近藤 今子 小嶋 汐美
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.70-75, 2018-07-07 (Released:2018-12-01)
参考文献数
14

目的 本研究は,一般的な麺料理の摂取時における意識的に汁を飲まない場合の汁および汁からの食塩摂取量について検討し,麺料理摂取時の食塩摂取量についての基礎的なデータの蓄積を目的とした。方法 T大学の学生および職員の成人男性33人および女性36人を対象に,つけ麺のそうめんとそば,汁麺のかけそば,ラーメンおよびかけうどんを,汁を飲まないことを条件に1~2週の間隔を置き食してもらった。同時に自記式無記名で試食の開始・終了時間,性別,試食した麺料理の日頃の摂取頻度,汁の飲量を調査した。提供した汁量と汁の食塩濃度,摂取後の残汁量と残汁の食塩濃度から,汁および汁からの食塩摂取量を算出した。分析は,麺料理の摂取頻度,汁の飲量について男女の比較をカイ二乗検定により,汁および汁からの食塩摂取量については,男女による違いをt検定,摂取時間との関連をピアソンの相関分析により行った。結果 各麺の分析対象者は,47~54人であった。週に1回以上の摂取は,ラーメンが22%で最も多かった。汁を3/4以上飲むものは男性に有意に多く,ラーメンでは男性47%,女性6%,かけそばでは男性43%,女性6%であった。麺料理全般では,汁からの食塩摂取量の平均は1.0~2.0gの範囲であった。汁および汁からの食塩摂取量は男女で違いがあり,つけ麺では男性が汁麺では女性が多く,つけ麺の汁からの食塩摂取量以外は有意な差があった。最も食塩摂取量の多いかけそばでは,男性1.86±0.15g,女性1.99±0.14g であった。摂取時間と汁および汁からの食塩摂取量とは,そばの摂取時間と汁からの食塩摂取量を除き,つけ麺では負の,汁麺では正の有意な関連が認められ,摂取時間と汁からの食塩摂取量の相関係数は,最も強いかけうどんではr=0.56,最も弱いそうめんでr=-0.32であった。結論 麺料理摂取における食塩摂取量は汁を飲まない場合,麺も含めた場合は1.3~2.0gとなり,およそ1.6~4.0gの減塩効果があることが確認できた。麺料理摂取時における減塩指導としては,現行の「麺類の汁は残す」に加え,男女による違いについて考慮する必要性が認められた。
著者
中出 美代 川田 尚弘 井成 真由子 原田 哲夫 杉山 由佳 松島 佳子 竹内 日登美
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.131-137, 2021-07-03 (Released:2021-08-04)
参考文献数
34

目的 大学生アスリートを対象に,競技力によって食習慣や食意識,睡眠習慣など生活習慣の管理に差異が見られるかについて,競技力の異なるチームに属する学生の間で比較検討を行った。方法 2016年12月,大学生サッカー部部員を対象に自記式質問紙調査を実施し,18~23歳の111名 (男性) から回答を得た (回収率100%)。調査内容は,食習慣,食意識,健康感,睡眠習慣,朝型・夜型質問紙 (Torsval&Åkerstedt (1980) 版) などである。①朝食摂取頻度,食事の規則性 (②朝食・③夕食),主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度 (④朝食・⑤夕食),⑥睡眠時間,⑦概日タイプ度の7項目について,良好を1として合計点 (1~7点) を算出し生活管理能力得点とした。分析は,競技力の高いAチームと控えチーム (B,C,D) に分け,競技力による食習慣の乱れや食意識と睡眠習慣の差異について,χ2検定およびMann-Whitney U-testなどによって検討した。結果 食習慣では,競技力の高いAチームの方が朝食を定時にとる割合が有意に高く (p = 0.010),主食・主菜・副菜を揃えた食事をとる頻度も高かった。また食意識についても,競技力の高いチームの方が,食事状況や栄養摂取についての評価が高かった。平日の平均睡眠時間は,Aチームが7時間40分,控えチームが6時間52分と50分ほどの開きがあり (p < 0.001),睡眠時間の充足度もAチームの方が高かった。概日タイプ度では,Aチームの方が朝型の傾向を示した。生活管理能力得点の平均得点は,Aチーム4.20点 (公式試合のスターティングメンバーのみでは5.27点),控えチーム2.40点であった。生活管理能力得点と食意識,健康感の間で,生活管理ができているほど食意識が高く,かつ健康と感じているという有意な相関がみられた。結論 競技力の高いチームの方が総じて生活管理能力が高かった。食や健康に対する意識の高さが自己管理能力の高さにつながり,実際に健康感も高まると思われる。食意識を高めるような啓発活動と,基本的な食習慣・生活習慣の改善が,学生アスリートの競技力向上に有効である可能性が示唆された。
著者
仲村 秀子 尾島 俊之 中村 美詠子 鈴木 孝太 山縣 然太朗 橋本 修二
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-75, 2013-07-20 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 2011年に発生した東日本大震災前後の岩手県・宮城県・福島県の出生率・男児出生割合・低出生体重児割合の変化を明らかにすることである。方法 2007年から2011年の人口動態統計を用いて,全国,岩手県,宮城県,福島県における各年の出生数・出生率,男児出生割合,低出生体重児数と割合の推移を,それぞれの変化率を用いて検討した。出生数・出生率は男女を合わせた総数を,低出生体重児数と割合は,総数と男女別の検討を行った。次に,2007年から2010年を合わせた出生率,男児出生割合,低出生体重児割合と2011年のものと比較し,χ2検定を行った(有意水準を5%)。結果 2007年から2011年にかけて全国,岩手県,宮城県,福島県の出生数と出生率は,概ね低下していた。2007年から2010年を合わせた出生率と2011年との比較では,全国,岩手県,宮城県,福島県いずれも2011年は有意に低下していた。男児出生割合は,2007年から2011年にかけて全国は緩やかに減少していた。岩手県は52.26%から50.44%に年々減少し,宮城県,福島県は50.78%から51.91%の間を増減しながら全体としては横ばいであった。2007年から2010年を合わせた男児出生割合と2011年との比較では全国と岩手県は有意に減少していた。低出生体重児割合は,2007年から2011年にかけて総数では,全国は安定していたが,岩手県・福島県は年によって増減しながら,ほぼ横ばいであった。宮城県は概ね上昇していた。男女別にみると,男児は2007年から2011年にかけて,全国は8.50%前後を推移したが,岩手県,宮城県,福島県は増減を繰り返し,ほぼ横ばいであった。福島県は他県と比較して増減の幅が大きかった。女児は全国では10.70%前後を推移したが,宮城県は概ね上昇していた。岩手県,福島県は増減を繰り返しながら横ばいであった。2007年~2010年を合わせた低出生体重児割合と2011年との比較では,宮城県の女児は10.02%から11.04%へと有意に増加し,福島県の男児は8.25%から7.56%へと有意に減少していた。結論 東日本大震災が起こった2011年の全国・岩手県・宮城県・福島県の出生率は2007年から2010年と比較して有意に低下し,男児出生割合は全国と岩手県で有意に減少していた。低出生体重児割合は,宮城県の女児で有意に増加し,福島県の男児で有意に減少していた。今後,より詳細な分析が必要である。
著者
中島 正夫 三田 有紀子
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.95-104, 2022-07-02 (Released:2022-08-05)
参考文献数
28

目的 若年女性の痩せ志向の改善や不必要・不適切な体重減量行動 (以下「ダイエット」という。) の予防に向け, 2017年3月に告示された学習指導要領等に基づいて作成された小学校及び中学校用「保健」「家庭」等教科書における「痩せ」に関連する記載内容を明らかにし, そのあり方について検討することである。方法 文部科学省教科書目録 (令和2年4月) に掲載されている2017年に告示された学習指導要領等に基づき作成された小・中学校用「保健」「家庭」等の教科書における, 「適正なボディイメージの形成」や「ダイエットによる健康障害」などの「痩せ」に関連する記載内容を抽出, 旧学習指導要領等に基づいて作成された教科書の記載内容と比較するなどしてそのあり方を検討した。結果 小学校3・4学年用教科書 (保健5冊) において, 「思春期の体型の変化」「生活習慣と健康」「適正なボディイメージの形成」は全てで記載されていたが, 「ダイエットによる健康障害」について記載されていたのは2冊であった。小学校5・6学年用教科書 (保健5冊・家庭2冊) において, 「生活習慣と健康」以外の記載はなかった。中学校用教科書 (保健体育4冊・家庭分野3冊) において, 「ダイエットによる健康障害」は保健体育全てで, 家庭分野では1冊で記載されていた。また, 「若年女性の痩せ志向」と「適正なボディイメージの形成」はそれぞれ保健体育3冊で記載されていた。なお, 改正された学習指導要領で示された「思考力, 判断力, 表現力等」などに関連し, 課題として「痩せ」を明確に取り上げた教科書はなかった。結論 若年女性の痩せがわが国の重要な健康課題となっているにも拘わらず, 学習指導要領・学習指導要領解説での「痩せ」に関連する記載内容は変更されない中, 小学生及び中学生を対象とした新しい教科書での「痩せ」に関する記載内容は原則拡充されておらず, むしろ一部簡略化されていた。特に小学校5・6学年用教科書では「痩せ」について明確な記載はなかったこと, また中学校学習指導要領では「生活習慣病などの予防」は第2学年で取り扱うとされていることから, 思春期の始まりの時期に「痩せ」に関する健康教育が十分行われない可能性がある。今後文部科学省が特に小学生を対象とした教科書での「痩せ」に関連する記載が拡充されるための措置を講じることなどが強く望まれる。
著者
井倉 一政 牛塲 裕治 長谷川 真子 齋藤 希望 児玉 豊彦
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.98-102, 2020-07-11 (Released:2020-07-30)
参考文献数
20

目的 本研究では中学3年生のストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A市の公立B中学校の3年生を対象として、無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は、性別、ストレスコーピング特性簡易評価尺度ジュニア版(以下BSCP-J)、ソーシャルキャピタル尺度(以下SC)を用いた。下位尺度の関連の検討は、Spearmanの相関係数を算出した。すべての検定において、p<0.05を統計学的に有意差ありとした。調査期間は2016年10月であった。結果 質問紙は85人に配付し、76人から回答を得た(回収率89.4%)。BSCP-Jの下位尺度の得点は、「気分転換」がもっとも高く、次いで「積極的な問題解決」であった。SCの下位尺度の得点は、「社会的信頼」がもっとも高かった。「積極的な問題解決」、「解決のための相談」、「気分転換」、「発想の転換」の4項目は互いに有意な正の相関を示した(相関係数0.400~0.627)。また、残りの2項目である「他人に感情をぶつける」と「がまんと先送り」が有意な正の相関を示した(相関係数0.286)。また、「積極的な問題解決」と「発想の転換」は、「互恵性」、「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められ、「解決のための相談」は「互恵性」、「社会的信頼」と正の相関が認められた。また、「気分転換」は「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められた。結論 ストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルは多くの項目で正の相関が認められた。また、ソーシャルキャピタルを醸成することは、中学生がストレスに対処する力を養成することにつながる可能性が考えられた。
著者
小島 ひとみ 中塚 美帆 小林 和成
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.77-83, 2021-07-03 (Released:2021-08-04)
参考文献数
13

目的 岐阜県における後期高齢者医療制度被保険者のぎふ・すこやか健診(以下,健診)の特徴,及び健診の有用性を明らかにする。方法 岐阜県後期高齢者医療広域連合において,平成27年から平成29年までの3年間に蓄積された健康診査の結果169,216件分をデータベースとした。受診回数による比較をするため,平成27年度の健診受診時点の年齢が75歳以上の者53,662人(男性21,689人,女性31,973人)を分析の対象とした。健診受診者の基本属性,受診回数別に身長,体重,血圧,脂質検査,血糖検査,肝機能検査,問診項目等との比較検討を行った。次に,各種疾病の有無を目的変数として,性別に年齢を調整変数,受診回数を説明変数としたロジスティック回帰分析にてオッズ比を算出し,健診の有用性を検討した。結果 健診受診回数が増える程,血液データの代表値は基準値に近い傾向にあり,服薬や疾病罹患は管理できていた。生活習慣病の有無に対する受診回数のオッズ比は,男性の75歳以上85歳未満においては0.918(95%CI:0.852-0.989,p=0.024),糖尿病の有病に対する健診の受診回数のオッズ比は男女の75歳以上85歳未満,85歳以上おいて0.889(95%CI:0.842-0.989,p<0.001),0.898(95%CI:0.818-0.985,p=0.023),0.863(95%CI:0.822-0.906,p<0.001),0.914(95%CI:0.851-0.983,p=0.015)であった。結論 後期高齢者の健診受診者の特徴は,健診の受診回数が多い者程,服薬や疾病罹患は管理できており,医療管理下にあっても継続的に健診を受けることの有用性が示された。
著者
藤田 ひとみ 鈴木 美奈 近藤 文 鈴木 貞夫 小嶋 雅代 永谷 照男 細野 晃弘 荒井 健介 辻村 尚子 岡 京子 岡本 尚子 神谷 真有美
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.77-83, 2014

<p><b>目的</b>:敷地内全面禁煙は,非喫煙者を受動喫煙による健康被害から守り,喫煙者の禁煙を促すのに有効な方法と考えられる.名古屋市立大学では2006年6月よりキャンパス敷地内全面禁煙となり,6年が経過した.そこで,キャンパス敷地内全面禁煙化後の医学生の喫煙率や,喫煙に関する意識の変化を調べた.</p><p><b>方法</b>:喫煙に関する意識調査として2007年12月に全学職員・学生を対象に実施したものと,2012年4月に医学部学生を対象として実施したものについて,医学部1~5年生の集計結果を比較検討した.</p><p><b>結果</b>:回収率は2007年調査では57.0%,2012年調査では92.6%であった.男子喫煙率は全学年で9.94%から5.39%,女子喫煙率は2.37%から1.65%といずれも減少しており,2012年調査では1年生の喫煙者は男女ともに0名だった.キャンパス敷地内全面禁煙については「知っていた」と回答した割合は84.9%から66.2%と有意に減少し,喫煙環境に無関心な非喫煙者が増えている状況がうかがえた.また喫煙者の平均年齢は,2007年調査時は22.3±4.2歳であったが,2012年調査では25.9±4.2歳と有意に高かった.</p><p><b>結論</b>:キャンパス敷地内全面禁煙化から6年経ち,喫煙率は低下した一方,敷地内全面禁煙の認知度が低下していたことから,今後の防煙教育や禁煙対策に向けた新たな課題が明らかになった.</p>
著者
今枝 奈保美 道満 恵介 目加田 慶人
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.60-69, 2018-07-07 (Released:2018-12-01)
参考文献数
18

目的 食事アセスメントの標準化を目的に,食品・料理の容量(かさ)を重量に換算する係数(容量密度)の状況を明らかにする。容量密度は,現在の日本の食品成分表には収載されていない。方法 米国とニュージーランドの食品成分表を対象に,栄養量が容量当たりで示されている食品を検索し,食品の容量密度(g/cm3)を観察した。容量の単位はカップ,液量オンス,大さじ,小さじ,ミリリットルとした。結果 米国の食品成分表では,容量密度の出現率は42%(8,257食品中3,476食品),ニュージーランドの出現率は92%(2,631食品中2,423食品)であった。容量密度の最頻値は1.0で,0.2と0.6にも山があり,容量密度が低値(0.1~0.2程度)は朝食用シリアル,ポテトチップス等で,容量密度が高値(1.3)だったのは蜂蜜,シロップ等であった。同じ食品であっても野菜やチーズ,肉料理は切り方や物理的な形状によって容量密度が異なっていた。結論 容量密度は両国間の誤差があったが,汁物やステーキ肉,魚,果物など容量に隙間のない食品は1.0,約2cm角の具材で容量に隙間がある料理は0.6~0.8前後,線キャベツのようにふんわりと粗の状態は概ね0.3と見積もること等が示唆された。食事の容量は写真からも把握できるので,食事アセスメントをする時は標準化した容量密度を整備しておくと便利であろう。