- 著者
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川畑 公平
川嶋 洋一
工藤 なをみ
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.P-77, 2015 (Released:2015-08-03)
【目的】フッ素化界面活性剤であるペルフルオロオクタン酸(PFOA)は難燃剤、乳化剤、撥水剤等に使用されてきたが、化学的に安定で環境中に残留し、また、ヒトにおける半減期が長いため、ヒトの健康への影響が懸念されている。PFOAをラットに投与すると、脂質代謝が広範に撹乱され、脂肪酸のβ酸化に関与する酵素が誘導されることが報告されている。一方で、ペルフルオロカルボン酸を投与すると肝臓にトリグリセリド(TG)が蓄積される。そこで本研究では、肝スライスを用いてPFOAにより脂肪酸のβ酸化が亢進するかを評価した。【方法】9週齢の雄性WistarラットにPFOA0.01% (w/w)含有飼料を1週間摂取させた。ラットより肝臓を採取し、precision cut sliceを調製し、Krebs-Henseleit buffer中で[14C]16:0また[14C]18:1n-9とインキュベートし、ex vivoで代謝物の生成速度を測定した。また、肝ホモジネートを用いて、in vitroでのミトコンドリアとペルオキソームのβ酸化活性を評価した。肝TGおよびリン脂質の量は、構成脂肪酸をGCで分析することにより定量した。【結果および考察】肝スライスを用いると、PFOA群における16:0および18:1n-9のβ酸化活性は、それぞれ対照群の約1.5倍、1.7倍に上昇した。ホモジネートを用いて評価したところ、16:0および18:1n-9のβ酸化活性はミトコンドリアでそれぞれ1.9倍、2.4倍、ペルオキソームでそれぞれ3.2倍、1.9倍に上昇した。PFOA群における肝臓中の総脂肪酸量は対照群と比較してむしろ有意に増加した。以上の結果より、PFOAを投与すると肝臓のβ酸化活性が上昇するにもかかわらず、肝臓中の脂肪酸量は低下しないことが明らかとなった。