著者
川端 哲弥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0587, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】入谷式足底板は、種々のテーピングやパッドを用いて評価し、足底板の形状を決定することが大きな特徴である。その中で入谷式後足部回外・回内誘導テーピングは、伸縮性テープを用いて、ほとんど伸張をかけずに誘導することが通常のスポーツテーピング等とは異なる点である。この関節の可動性を制限しない方法でのテーピングによって、片脚立位の安定性が変化するかを、重心動揺計を用いて検討した。【方法】対象は健常成人20名(男性7名、女性13名)、平均年齢28.5±4.5歳とし、全員について右足に回外誘導テーピング(回外)、回内誘導テーピング(回内) を行い、右片脚立位時の重心動揺を測定した。テープは伸縮性のあるニトリート社製EB-50を使用した。測定肢位は非支持側膝を90度屈曲位、上肢はかるく体側につけ、5m前方の1.5mの高さの目印を注視させた。重心動揺はZebris社製のWinPDMを使用し、裸足、回外、回内の3条件で片脚立位になった5秒後からの30秒間を計測した。計測パラメータは総軌跡長、外周面積、前後方向動揺の標準偏差(前後動揺)、左右方向動揺の標準偏差(左右動揺)とした。計測パラメータごとに、裸足と回外、裸足と回内の平均値の差についてt-検定を用いて比較した。【結果】裸足と比較し回外では総軌跡長(p<0.01)および左右動揺(p<0.05)が減少した。回内では総軌跡長(p<0.01)が減少した。その他では差は認められなかった。【考察】回外と回内で異なった結果となったのは、回外で左右動揺が減少したことである。後足部回外が、横足根関節での距舟関節と踵立方関節の関節軸を交差した位置関係にし、強固な足部にするとの報告から、その作用により重心動揺が減少したと考えられた。しかし、前後動揺では差がないことから、前後の安定は前足部や距腿関節等の他の要素が関与しているのかもしれない。一方、総軌跡長は回外、回内ともに減少していたことから、関節肢位の影響とは考えにくい。キネシオテープは入谷式同様、伸張をかけないで使用するが、皮膚及び腱等の皮下組織への感覚入力を増加させ、神経筋を促通させるとの報告がある。入谷式は、皮膚および足アーチ保持に重要な腓骨筋腱、後脛骨筋腱に沿った走行であり、テープが前記の作用を起こさせ、神経筋を促通し総軌跡長を短縮させたと考えられる。また関節の可動性を制限しないことから、単一の筋ではなく複数の筋の共同した反応が起こりやすいのではないかと考えられた。しかし、皮下組織との関連等、推察の域を超えないことから今後、検討が必要だと考えられた。