著者
川谷 尚平 小林 元 清野 達之
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.85-90, 2012-03

閉鎖林冠下に生育するヒノキとサワラの後継樹を対象に,主に枝下高と樹冠半径に着目し,伏条更新を行わないヒノキは受光効率を高めるように,伏条更新を行うサワラは伏条更新の機会を高めるように樹形をデザインしているという仮説を検証した。ヒノキ後継樹は,樹高成長によって明るい光環境に葉を配置し,樹冠下層の枝をより高い位置まで枯らして暗い光環境への葉の配置を回避していた。一方,サワラ後継樹は生枝下高を低く保持することと,樹冠を水平方向に大きく広げることによって,枝が地面に接する機会を高めていた。これらより,伏条更新を行わないヒノキは受光効率を高めるように,伏条更新を行うサワラは伏条更新の機会を高めるように樹形をデザインするという本研究の仮説が支持された。実生更新が困難な暗い環境において,伏条更新の機会を高めるサワラの樹形形成様式は,その生活史戦略を理解する上で重要である。