著者
上條 隆志 川越 みなみ 宮本 雅人
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.157-165, 2011-07-30
被引用文献数
6

2000年噴火以降の植生にみられた変化について、著者らの既存の報告を中心にして紹介する。噴火初期の植生被害は、陥没カルデラの形成に伴う山頂部の消失、泥流の発生、火山灰の堆積による被害であった。山頂部の消失によりハコネコメツツジなどが島内で絶滅した可能性がある。火山灰放出の終息後も、二酸化硫黄を含む火山ガスの放出が続いたため、噴火後も樹木被害が進行し、植生は退行的に変化した。その一方で、特定の草本種が増加した。草本優占種の変化としては、オオシマカンスゲからハチジョウススキへと変化する地点が多かった。2005年以降オオバヤシャブシなどの木本は全体増加傾向にあるが、増加がみられない地点も多く、場所によってはハチジョウススキ優占群落が長期的に成立し続ける可能性がある。噴火と二酸化硫黄放出によって島内で減少した種がある一方で、噴火後に特異的に増加した種もみられた。その一つであるユノミネシダは火山ガス濃度の高い島の東部に多く出現した。