著者
後藤 典子 熊坂 聡 三瓶 典子 澤 恩嬉 齋藤 美穂 山上 龍子
出版者
山形短期大学
雑誌
山形短期大学紀要 (ISSN:13477366)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.13-26, 2010-03

はじめに インドネシア・フィリピンとの経済連携協定(EPA)による看護師・介護士を目指す外国人の来日で、看護・介護分野と日本語教育との連携の必要性が認識され始め、介護のための日本語の教科書や補助教材が作成されてきている。本学には、日本の大学に進学するための日本語を学ぶ留学生別科と介護士を養成する人間福祉学科があり、人間福祉学科では今年度から留学生も受け入れることになった。しかし、山形で外国人介護士の教育を行う場合、上記のような教材を利用しても、特に地域語を話す介護保険施設利用者(以下利用者)との会話などは簡単ではないと予想されることから、両学科の教員が連携して、介護のための地域語教材を開発することになった。実際には外国人介護士に対してどのような日本語が話されることになるのかを調査するために、まず利用者と留学生の実際の会話を録音し、その録音資料を基に、どのような方言が使用され、それらは外国人にどのように聞こえ、どのように理解されているかをみることにした。
著者
川越 ゆり
出版者
山形短期大学
雑誌
山形短期大学紀要 (ISSN:13477366)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.45-54, 2010-03

イギリスは古い建築物への愛着が強い国である。それは、中世の荘園領主が邸宅として建設したマナー・ハウス(manor house)が、個人の住宅のほか、スポーツ施設や宿泊施設、マンションなどの形で今なお残っていることにもよく表れている。長い歴史をもつ場所のイメージとして、マナー・ハウスはしばしばイギリスのファンタジー作品にも登場する。『時の旅人』(A Traveler in Time,1939)や『トムは真夜中の庭で』(Tom's Midnight Garden,1957)、そして、『グリーン・ノウの子どもたち』(The Childrenof Green Knowe,1954)などが好例だろう。『時の旅人』『トムは真夜中の庭で』はタイムファンタジー(以下、TF)である。『グリーン・ノウの子どもたち』はTF ではないが、「時間」をテーマにしている点は他の二作と共通している。この小論では、『グリーン・ノウの子どもたち』に、どのような時間の相が描かれているのかについて読み解くことを目的にしている。論を展開する前に、簡単に著者の紹介をしておきたい。ルーシー・ボストン(Lucy M.Boston,1892-1990)は遅咲きの作家で、60歳を過ぎてから創作活動をはじめた。全6巻に渡る「グリーン・ノウ」シリーズが代表作で、『グリーン・ノウの子どもたち』(以下、『グリーン・ノウ』)はその1巻目にあたる。シリーズの舞台になっている古い館は、ケンブリッジシャーにあるボストン自身の邸宅で、1120年に建築されたマナー・ハウスがモデルになっている。