著者
工藤 純也
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-19, 2015-11

東北地方太平洋沖地震により、岩手県沿岸地域は甚大な被害を被った。地域の産業としての観光業は機能の多くを失ったが、被災地では「復興応援」や「支援」と銘打ったパッケージツアーが多数実施されている。被災地における観光を通じて、被災地の住民と観光客との間に意識のギャップが生じたり、地域の社会的アイデンティティが消費されるという問題は従前から指摘されてきた。そこで、これまで明らかになっていなかった、震災後に増加した「復興応援バスツアー」の全体像を、独自に構築したデータベースによって把握するとともに、観光客、観光地に暮らす住民、観光業従事者への聞きとり調査・質問紙調査を通じて、岩手県沿岸地域における東日本大震災後の観光の実態把握を行った。調査の結果、多数の復興応援バスツアーが被災地で実施されている一方、観光業従事者、地域住民、被災地を訪れる観光客との間の意識と関係性には、ズレが生じていることが明らかになった。このことをふまえ、地域住民と観光客、観光業従事者とを結びつける仕掛けの必要性について論じた。