著者
米地 文夫 リヒタ ウヴェ
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-31, 2009-12

宮沢賢治の作品のなかでも最も有名なものの一つである「銀河鉄道の夜」の物語のなかに「ケンタウル祭」という不思議な名前の祭りが登場する。物語の中心が星座をめぐる夢の旅であるため、この名はケンタウルス星座に因むものと考えられてきた。しかしこの名は賢治の若き日の短歌が初出であり、その内容や時期から星座には関係なく、ギリシャ神話の半人半馬の怪物ケンタウロスのドイツ語ケンタウルスをそのまま祭の名に用いたものであることがわかった。この時期、賢治は盛岡高等農林学校で馬の飼育管理とドイツ語を学んでおり、ちゃぐちゃぐ馬ッこをはじめとする馬産地岩手の人と馬との祭から発想したのである。また、キメラに関心があった賢治は人間の上半身と馬体の下半身をもつケンタウルを、理性と本能的欲望との葛藤に悩む自分になぞらえた。岩手と同じく、馬を祝福することで春の農耕の始まりに豊饒を祈るドイツにもある民俗を賢治はおそらく学び、若い男性としての高揚感をケンタウル祭と表したのである。のちに少年のための物語「銀河鉄道の夜」にこの名の祭を組み込むが、静謐な物語にはなじまず、結局は、削除されたり「銀河の祭」や「星祭」という名が加えられて、ケンタウル祭のイメージは希薄になってゆくのであった。
著者
工藤 純也
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-19, 2015-11

東北地方太平洋沖地震により、岩手県沿岸地域は甚大な被害を被った。地域の産業としての観光業は機能の多くを失ったが、被災地では「復興応援」や「支援」と銘打ったパッケージツアーが多数実施されている。被災地における観光を通じて、被災地の住民と観光客との間に意識のギャップが生じたり、地域の社会的アイデンティティが消費されるという問題は従前から指摘されてきた。そこで、これまで明らかになっていなかった、震災後に増加した「復興応援バスツアー」の全体像を、独自に構築したデータベースによって把握するとともに、観光客、観光地に暮らす住民、観光業従事者への聞きとり調査・質問紙調査を通じて、岩手県沿岸地域における東日本大震災後の観光の実態把握を行った。調査の結果、多数の復興応援バスツアーが被災地で実施されている一方、観光業従事者、地域住民、被災地を訪れる観光客との間の意識と関係性には、ズレが生じていることが明らかになった。このことをふまえ、地域住民と観光客、観光業従事者とを結びつける仕掛けの必要性について論じた。
著者
米地 文夫
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.17-34, 2007-12

宮沢賢治の短編「猫の事務所」は,事務所の末席の書記かま猫に対する「いじめ」の問題を取り上げた作品として近年注目されているが,結末では訪れた獅子によって解散を命じられ,廃止となる。本論文はこの作品が実は政治的世界・民俗的世界・賢治の内面世界の三者が重層的に組み込まれたものであることを明らかにするものである。組み込まれた政治的テーマは郡役所廃止問題で,「猫の事務所」の位置や役割,事務室の人員構成などの描写から稗貫郡役所がモデルであり, 1926(大正15)年6月30日に閉鎖になる。「猫の事務所」はこの年の3月に発表されている。郡役所の廃止は既定のことではあったが遅延していたのを,浜口雄幸蔵相の緊縮財政のもと廃止が確定し,浜口が内相の時,廃止される。獅子はライオンとあだ名された浜口なのである。この物語の民俗的な背景は,竈の煤で黒く汚れた猫をかま猫と呼ぶことと,獅子舞が火伏せの竈祓いに訪れることなどである。獅子はかま猫の守護神のような存在なのである。さらに,同僚に対する態度を自省する賢治自身の心境も反映したものである。すなわち「猫の事務所」の獅子による解散は郡役所廃止と浜口雄幸の決断とをカリカチュア化したものであり,主人公かま猫と巡回してきた獅子というキャラクターは,竈をめぐる民俗から生み出され,職場の同僚による「いじめ」は賢治自身の職場体験によるものであった。
著者
三浦 修 平塚 明
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.411-428, 2004-03-31

かつて生活や生産のための資源として利用され管理・維持されてきた里山が、現在いろいろな方面から注目され、その保全のための研究、管理の実践運動、地域資源としての景観評価が試みられている。 ほぼ80年前に活躍した宮沢賢治は多くの文学作品を残したが、そこには、その後岩手県域でリストアップされた希少植物も登場する。その多くは草地、二次林、溜め池、河川などの里山に生育していた植物である。 作品中の希少種を手掛かりとして、1910年代後半から1920年代の岩手県における、草地を中心にした里山植生のダイナミズムを復元した。この80年間に植生が大きく変化した原因は、人々の生活と生産が里山依存を弱めた結果、植生管理が放棄されたことにある。シバ草地やススキ草地の遷移により、遷移初期相に適応した植物(オキナグサ、キキョウ、オミナエシなど)が衰退し、消滅した。また、サクラソウは管理が放棄された薪炭林や農用林の林冠層が発達した結果、林床の光環境が悪化して衰退した。
著者
信夫 隆司
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.243-265, 2004-02-10

本稿は、1970年代終わりから今日までの国際政治理論の系譜を探ることを目的とした。本稿で、主として取り上げた国際政治理論は、ケネス・ウォルツのネオリアリズム、ロバート・コヘインの国際制度論、アレクサンダー・ウェントのコンストラクティヴィズムである。これらの国際政治理論について、存在論と認識論という視点から新たな分析を試み、その上で、アナーキーと国家のインタレストのとらえ方について言及した。
著者
米地 文夫
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-113, 2011-07

宮沢賢治の有名な物語「銀河鉄道の夜」は、銀河鉄道の旅の部分が幻想的であるが、中で異質で写実的な部分が「プリオシン海岸挿話」で、白鳥の停車場での停車時間中に主人公のジョバンニとカムパネルラが化石の発掘現場を見てくる話である。旅中で唯一の途中下車で、モデルとなった出来事や場所が特定でき、この挿話を含む章には「北の十字架」と「プリオシン海岸」という二つの異なるテーマが収められ、章題も不自然に長くなっており、少年たちの言動が他の部分に比し大人びている、など多くの点で異質である。それらのことから、この挿話は元来は夢の旅の原稿とは別に書かれた独立の短編がのちに「銀河鉄道の夜」の中に挿入された部分であることがわかった。
著者
桒田 但馬
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.91-105, 2015-11

本稿の目的は東日本大震災復旧・復興にかかる特別課税の実態を明らかにし、その政策的示唆を得ることである。特別課税の決定に至る詳細な経緯を踏まえて、政府等における議論の主な特徴、特別課税の意義や問題などを明らかにすると、そこから次の政策的示唆を導出することができる。すなわち、恒久的な基金制度(「災害対策基金」)の早期の創設を国、都道府県、市町村レベルで義務化し、大災害に迅速に、かつ効果的に対応できるようにする。そうすれば、これまでのように復興基金を大災害ごとの特例措置として設定しなくてもよい。また、今回のように特別課税をきわめて大きな規模で行わなくてもよい。
著者
米地 文夫 三浦 修 平塚 明
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.391-409, 2004-03-31

宮沢賢治の作品にしばしば登場する「標本」と「証拠」という語について、自然科学の立場から検討を加えた。自然愛好家であり教師でもある賢治は、「標本」を、展示用、教材用の見せる「もの」としての「標本」sampleと考えていた。彼は本質的に研究者ではなく、彼の「標本」には, 研究者がより重要と考える《研究の材料、研究の保証となる証拠としての「標本」specimen》は含まれていなかった。「標本」specimenを、研究者は「こと」を説明する科学的な「証拠」voucherとして用いる。しかし賢治はこれらは「標本」と呼ばず、「証拠」と書いている。賢治は一種の不可知論者でもあったので、学者が挙げる「証拠」が描く世界像は、時代とともに変わると考えていたのである。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.247-261, 2006-03-01

1855年の日魯通好条約で日露国境が画定し、南千島は日本領となった。明治期から定住者も増えて、北千島とは異なり、根室と有機的に結びついた経済圏が成立してゆく。漁業・水産業を中心とする内国植民地的な発展は、1945年のソ連軍侵攻とその後の日本人強制退去によって終焉し、ソ連/ロシアによる実効支配が現在まで続いている。日本は、1960年代から南千島を「北方領土」と呼び、「日本固有の領土」としてロシアに返還要求しているが、南千島90年間の日本時代の実態を知る人は少ない。本稿は、南千島における日本人社会の成立とその構造、ソ連侵攻と占領下の南千島、日本人強制退去のプロセスを、元島民の目から明らかにするものである。
著者
リヒタ ウヴェ 渡部 貞昭
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.255-261, 0000

2001年1月31日、ドイツ連邦政府は急進右翼のドイツ国民民主党(NPD)の禁止を連邦憲法裁判所に申し立てた。その理由は、外国人への暴行及びユダヤ人施設への冒涜・破壊行為の件数が増大したからであった。本稿はホロコーストと同胞のユダヤ人にたいする西ドイツ戦後社会の態度の考察である。
著者
島田 直明 米地 文夫
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.119-131, 2006-03-01

カラマツは宮沢賢治作品への登場頻度の高い樹木である。そのカラマツ林やその周辺の景観について賢治の描写を分析するとともに、同時代の代表的詩人北原白秋の作品と比較検討を行った。本論文では特に心象スケッチ『春と修羅』のなかの作品群に描かれたカラマツに着目した。それらの多くは岩手山麓の牧草地や放牧地の防風林としてのカラマツ林であった。賢治の作品から1920年代の岩手山麓は、草地や草地から遷移が進んだ森林、カシワ林などさまざまな植生タイプがみられ、また草地を囲むようにカラマツ林が列状に連なる景観であったと読み取れた。旧版地形図や岩手県統計書などの資料から判読した当時の景観も同様であり、賢治が『春と修羅』の作品群において正確に景観を描写していたことが検証できた。一方、北原白秋の有名な詩「落葉松」は、カラマツ林の中に歩み入り、また歩み去る己れを抒情的に詠いあげた。この詩人の絶唱ともいうべき作品ではあるが、カラマツ林の景観そのものについては全く描写していない。これに対して、賢治はカラマツ林の景観をナチュラリストの眼で観察し、心象スケッチという形で具体的に描写・記録した。彼はのち,カラマツを用いて景観を造る「装景」をも考えていたのであった。
著者
阿部 未幸
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-180, 2014-03

東日本大震災からの地域コミュニティの再建に欠かせないもののひとつとして、郷土芸能の重要性はしばしば指摘されてきた。本稿では、岩手県岩泉町小本地区において伝承される中野七頭舞に着目し、1976年に小本地区で「中野七頭舞保存会」が結成されてから、東日本大震災に直面するまでの過程を明らかにする。中野七頭舞保存会は、自らの伝承・公演活動に加え、小本小学校の「民舞クラブ」設立をきっかけに同校で中野七頭舞の指導を始め、地区出身者の舞い手を育成している。現在の保存会メンバーの多くは、小本小学校で中野七頭舞を学んだ卒業生であり、彼らは進学や就職で小本地区を離れても、公演や講習会のために郷土へ戻ってくる。保存会は、県外の民族舞踊愛好者や教員たちに積極的に講習を行い、現在では、数多くの学校やサークルなどで中野七頭舞が取り組まれている。中野七頭舞は多様な担い手によって構成されており、こうした地域内外のネットワークが、地域コミュニティの維持や東日本大震災発生からの復興支援に機能したことを明らかにした。
著者
三浦 修
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.127-149, 2010-05

岩手県の自生種のシラカンバ(カバノキ属)、導入種のドイツトウヒ(トウヒ属)、導入種のポプラ(ヤマナラシ属)の植栽によって、当時の農村景観を改善できると賢治は考えた。現在の農村景観計画に相当するこのアイディアは、田村(1918)が提唱した装景に由来する。ここでは、3属の樹木を賢治の「装景樹」と呼び、どのように作品に描かれたかを詳細に記載した。賢治が実際につくった景観計画案やその実践のプロセスをも明らかにした。作品描写の分析によって、賢治の科学(植物生態学など)的リテラシーを考察した。さらに、装景樹の着想について、当時の林学や植物学において、樹木や森林の美が研究されたことや、造園学とその実践学が確立したことなどの学問的な時代背景を考察した。
著者
米地 文夫
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.145-152, 2000-11-01

西川如見(1648-1734)は長崎の人で天文学者・地理学者である。彼は地形を科学的に観た最初の日本人学者である。なぜならば彼は著書『怪異辨断』(1715)において,天文と地文(自然地理)に関係した諸現象について科学的に論じている。彼は当時,西洋の地球球体説を理解していた数少ない日本人学者の一人であり,同書において,地球が丸いことを科学的に解説している。如見はまた,『怪異辨断』において多くの自然地理ないし地形学的現象について論じ,それらは怪異ではなく,科学的合理的に説明できる自然現象であることを説いた。例えば彼は,地すべりを,その土地の地質・地形的な性質と結び付け,一種の簡易な実験を用いて説明した。彼はまた,世界各地の自然地理〜環境に関する情報,例えばイタリアの火山やアラビアの沙漠などに関する情報も紹介している。
著者
伊東 栄志郎
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.123-137, 2001-12-31

本論は、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』の主人公レオポルド・ブルームがフリーメイソンの会員であると人々から噂されていることの真偽とその意義について論じたものである。第8挿話で、ノーズィ・フリンがデイヴィ・バーンのパブでブルームがフリーメイソンであると噂し、第12挿話では「市民」がやはりブルームがフリーメイソンであると示唆する。第18挿話では、彼の妻モリーでさえも自分の夫がフリーメイソンであったと考えている。ブルーム自身はそのことは決して口外しないのだが、彼の無意識を映し出す心理劇となる第15挿話では、彼は見事にフリーメイソンのマスターを演じている。彼がフリーメイソンだとすれば、それは何を意味するのか?実は、このことはブルームがユダヤ系であることと深く関わっている。帝政ロシアはじめヨーロッパ各地での排斥運動を受けて、1904年前後に急激にユダヤ人がアイルランドに流人してきたことで、当時のアイルランドではユダヤ人排斥運動が小規模ながらリマリックやコークで起こりつつあったのである。一方、フリーメイソンはユダヤ教を認知しており、ユダヤ系2世であるブルームがフリーメイソンに入会してもおかしくない当時の社会状況が背景にあった。ブルームが本当にフリーメイソンなのかどうかは定かではない。だが、ブルームがフリーメイソンかもしれないという噂が小説内で戦略的に流されているのは、当時の世相を反映した社会風刺なのである。
著者
佐藤 智子
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.125-138, 2015-03

アメリカ合衆国マサチューセッツ州プリマス町は、宮城県七ヶ浜町と20 余年に及ぶ姉妹都市交流を続けている。2011 年3 月11 日に七ヶ浜町が地震と津波により壊滅的な被害に見舞われたという一報が入るや、いち早くプリマス町は支援に乗り出した。最も大きな取り組みは、町議会、プリマスロータリークラブ、そしてプリマス町周辺を拠点とするテレビ局が連携して行った募金活動のテレソンであった。町民が一丸となって取り組んだこのプログラムは、想像以上の成果を上げた。 本論では、テレソンというこのコミュニティ・プロジェクトの成功の要因を、直接的そして物理的な面と、プリマス町そのものの特性という間接的な面から考察した。第一義的には、両町の強固な関係、七ヶ浜町の甚大な被害に寄せるプリマス町民の共感、前述の三機関の精力的、そして広範囲にわたる働きかけなどを指摘することができる。さらに、もっと本質的な要因(遠因)として挙げることができるのは、プリマス町には日頃からボランティア活動などに励む人々が多く、互酬性と信頼性の社会関係資本が十分に蓄積されていたことである。この「資本」が募金活動の成功に大きく寄与している。
著者
佐藤 智子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.31-64, 2005-10-31

今から362年前の1643年6月10日、そして再度の7月28日、鎖国時代の日本であったが、1隻のオランダ船ブレスケンス号が、水と食料を求めて山田湾に姿を現した。記録によると、異国船の入港に地元の人々は驚愕を隠せなかったが、乗組員を温かくもてなした。この史実をもとに山田町は、1960年代にブレスケンス号の母港であるオーストブルフ市へ姉妹都市締結の打診をしたが、実現には至らなかった。その後オランダ王室私設顧問からクリステリック・カレッジ・ザイスト校を紹介され、1996年国際理解教育を目的にして同校へ最初の中学生を派遣した。ザイスト市表敬訪問も含むこのプログラムは継続して実施され、両市町の絆が強固になっていった。そして日蘭交流400周年記念の2000年に、山田町はザイスト市と念願の友好都市締結を果たした。提携から今年で5年が経過したことになるが、継続性をみている青少年派遣事業に焦点を当てて交流の内容を検証した。また何故1960年代に山田町が望んだ姉妹都市締結が実現しなかったのか、日蘭関係の歴史を紐解きながら考察した。
著者
由井 正敏 工藤 琢磨 藤岡 浩 柳谷 新一
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-9, 2001-07
被引用文献数
4

わが国のイヌワシの繁殖成功率は近年低下しており、その原因としてうっぺいした森林の増加が推測される。イヌワシは疎開地や森林内のギャップで狩りを行うため、うっぺいした森林は不適である。このため、秋田県田沢湖町のイヌワシ営巣地を囲む二次林地帯に1-2haの小規模疎開地6ヵ所を伐採造成し、非営巣期のイヌワシの採餌行動の変化を調査した。その結果、造成疎開地における採餌行動頻度は対照区に比べ有意に増加し、その有効性が確かめられた。