著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.470-475, 1984 (Released:2011-08-10)
参考文献数
36

折れ線型自閉症の病態生理の解明のため, Rutterの診断基準にもとつく幼児自閉症28名と折れ線型自閉症22名の計50名を対象として, 臨床的脳波学的検討を行った。その結果, 折れ線型自閉症では特異な経過で自閉症を発症する他, 幼児自閉症に比較して脳障害を示唆する臨床的脳波学的所見が少ない傾向があること, psychic traumaと考えうる誘因を有する症例が多いこと, 予後とくに言語予後が不良であることが特徴的であった.このため, 折れ線型自閉症の成因としては, 幼児自閉症の成因とされている脳器質性障害による言語認知障害とは異なる機序が推測された.
著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.370-378, 1982-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

3-11歳の小児1,009名, 重度精神遅滞59名, 微細脳障害症候群71名の手・足・目の利き側を検討し, 利き側の混乱と脳障害との関連についての知見をえたので報告した.1. 厳密な意味での正常小児674名の手・目の左利きの頻度並びに利き側の混乱の割合は, それぞれ5.5%, 29.2%, 28.2%で, 年齢発達とともに減少し, 7歳以降でほぼ一定化する傾向がみられた。なお, 利き側の混乱の要因は左目利きであった.2. 左手利きの頻度は, 重度精神遅滞 (32.2%) においてのみ, 正常少児に比し有意の高値を示した.3. 左目利きの頻度は, 行動異常 (48.1%), 微細脳障害症候群 (45.1%) においてのみ, 正常小児に比し有意の高値を示した. しかし, 読字障害との関連はみられなかった.4. 非正常小児, すなわち学業不振・精神発達遅滞, 行動異常, 痙攣, 言語発達遅滞の既往, 重度精神遅滞, 微細脳障害症候群をもつ小児のいずれにおいても, 利き側の混乱は正常小児に比し有意の高値を示し, しかも脳障害の重篤度に応じて高値を示す傾向がみとめられた.5. 小児の神経学的診断上, 手・足・目の利き側の検討が, 脳障害の摘発に有用であることを指摘した.
著者
市場 尚文
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.470-475, 1984

折れ線型自閉症の病態生理の解明のため, Rutterの診断基準にもとつく幼児自閉症28名と折れ線型自閉症22名の計50名を対象として, 臨床的脳波学的検討を行った。<BR>その結果, 折れ線型自閉症では特異な経過で自閉症を発症する他, 幼児自閉症に比較して脳障害を示唆する臨床的脳波学的所見が少ない傾向があること, psychic traumaと考えうる誘因を有する症例が多いこと, 予後とくに言語予後が不良であることが特徴的であった.このため, 折れ線型自閉症の成因としては, 幼児自閉症の成因とされている脳器質性障害による言語認知障害とは異なる機序が推測された.
著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.258-264, 1989-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
26

正常人48名 [左手利き24名 (男12名, 女12名), 右手利き24名 (男12名, 女12名)] を対象として, tachistoscopeを用いて視覚認知における優位視野と手, 目の利き側との関連を検討した.1) 両側同時呈示における平均露出時間と利き手, 性別との関連は認められなかった.2) A値測定時の1aterality indexで左視野優位を示したものは8名であったが, 右手利き, 左手利きおのおの4名で利き手と優位視野との関連は認められなかった.利き目は, 8名中6名が左目利きであった.一方, D値測定時に左視野優位を示した7名は全員左目利きで有意差を示し, 利き目と優位視野との関連が確認された.3) 各種刺激別の優位視野の割合と利き手, 利き目との関連は認められなかった.以上より, 正常人の視覚認知における半球優位性の検討においては, 利き目の考慮が必要と考えられた.
著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.558-565, 1982-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
38
被引用文献数
1

微細脳障害症候群 (MBD) の学習障害の神経機序と, 行動異常を有するてんかんとMBDとの関連を明らかにする目的で, 系統的な神経心理学的検討を行った. 対象は微細な脳障害が基盤にあると推測されるIQ 90以上の行動異常児53例 (1群, 平均IQ 104) と, 行動異常を有するIQ 90以上の大発作てんかん30例 (II群, 平均IQ 108) の計83例である.1. 手・足・目の利き側の不統一を示したのは1群49.0%, II群43.3%で, 正常小児 (23.3%) に比し有意の高値を示した.2. ITPA言語学習能力検査 (日本版) では, 言語学習指数は知能指数より低値を示すものが多く, 下位検査でも2群とも表象機能に比し自動機能に著しい選択的欠陥を示したが, いずれも学業成績の下級のものに著明であった.3. Bender Gestalt test (Koppitz法) で+1SD以上の高値を示したものは1群18例, II群10例であった. 高値例の検討では, ITPAの視覚配列記憶能力との相関がみられ, 利き側の混乱, 読み書き障害, 学業不振も高率に合併した.4. Frostig視知覚発達検査の全知覚指数 (PQ) が90以下の低値を示したものは29例中16例 (55.2%) で, PQはBender Gestalt testの得点と相関を示した.5. 脳波検査では, 2群とも間脳機能障害を示唆するanterior theta burst, 6c/swave & spike phantom, 6 & 14c/spositivespikesを高率にみとめた. これら挿間性脳波異常を有するものでは2群ともITPAの自動能力に選択的欠陥を示すものが多かった.以上の検討より, MBDにおいては記銘・認知・自動運動などの自動能力に選択的障害を有することが明らかとなり, これらがMBDにおける学習障害の基盤を形成すると考えられた. 行動異常を有する大発作てんかん児が極めてMBDに類似した障害を示したことより, これらの児においてもMBDと同様の医学的教育的配慮が必要であることを指摘した.