著者
加藤 進 市岡 高男 山内 徹
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.331-336, 1999-07-10
被引用文献数
2

1997年12月2日から7日まで, フィリピン, ケソンシティーのビサヤス通りに面した環境天然資源省の敷地内でハイボリュームエアーサンプラー(High Volume Air Sampler)とパッシブサンプラー(Passive sampler)を用いてエーロゾル総重量(TSP)濃度とその組成およびNO_2濃度を求めた。その結果, TSP濃度は平均値で216μg/m^3であり国家基準(230μg/m^3)を満足していた。鉛の平均濃度は0.43μ9/m^3で, 1980年代の値よりも1/2まで濃度が減少し, 無鉛化燃料への転換状況の進行が伺えた。しかしながら, TSP濃度は鉛やNO_2と良好な相関関係を示し, 移動発生源の寄与が高いことも伺わせた。重金属分類のうちでは鉄の濃度がもっとも高かった。水溶性イオンの中では硫酸イオン濃度がもっとも高く, ついで塩化物イオン濃度が高かった。測定地点が海岸線から約12km離れているのにもかかわらず, 塩化物イオン濃度は1992年に測定された四日市(環境科学センター, 海岸線から3km, 国道1号線から約50m)の測定値よりも高く, 海塩粒子以外の発生源の存在が示唆された。また, 硫酸イオン濃度は1.77μg/m^3で四日市の年平均値の1/3値であった。また, 石油燃料の寄与度を示すバナジウム濃度は同方法で観測された四日市の値に比較すると高く, NO_3^-やSO_4^<2->との相関も良好であった。