著者
市川 家康
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.114-121, 1969

印刷インキのレオロジーがわが国に本格的に導入されたのは昭和30年ごろだと思う。当時インコメーターや各種のビスコメーターが導入され,主として製品の品質管理の目的に応用された。と同時に高分子化学,顔料化学の進歩が印刷インキの性格を一変させ,これが印刷技術の進歩に著しい拍車をかけたといえる。インキのレオロジーの進歩はさらに印刷適性の研究と密接に結びついて,印刷行程そのものに対する分析が初めて可能になった。また印刷行程の特異な点が,他のフィールドと異なったビスコメトリーを逆に発展させた経緯もある。本印刷インキのレオロジーグ,紙ムケ,浸透,セットなどにからまるインキレオロジーの特長について概観し,参考的にロール間におけるインキ皮膜分裂の状況を運動論的に解説して,印刷の本質であるインキ転移を説明した。