著者
市栄 誉
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.169-182, 1977
被引用文献数
2

円形の暴風が一定速度<I>c</I>で上層だけにある西岸海流の上を通過する時の傾圧反応を取扱った.線型の慣性項を考えると, 流れの影響はcが10ms<SUP>-1</SUP>より小さい時には大きくきいてくる.慣性項のため暴風の通過後境界面には, 幅は暴風域の大きさで長さはπ (<I>c</I>-ν) <I>f</I><SUP>-1</SUP>の上昇下降域が交互に現われる, ここでνは流れの速度である.流れの左縁に強い渦度がある場合, 暴風の下流で境界面の擾乱は流れの左に向って進行するが, 流れの左側のくさび状の区域だけに限られる.1971年の台風Trixの際におこった日本の南岸の日平均水面の数日周期の振動をこの理論によっておこる黒潮の蛇行又は境界面の擾乱と解釈することができる.
著者
市栄 誉
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-120, 1980-05-30 (Released:2011-06-17)
参考文献数
30
被引用文献数
1

海底摩擦および水平渦粘性を考慮した順圧モードの南極周極流 (以下A. C. C. と略す) に対する無次元方程式を導いた. 流線に沿って渦度方程式を積分すると, 水深をコリオリパラメーターで割った量の値にのみ依存する0次の流線が得られる. 流線に沿って運動方程式を積分すると, 風の応力による運動量の入力と海底摩擦および水平渦粘性による運動量の消散との間の関係式が得られる.この関係式により得たA. C. C. の全流量はKAMENKOVICH (1962) が鉛直粘性102cm2s-1を用いて得た値の1/3であるが, この式からBRYAN and Cox (1972) が求めた全流量がモデルによって異っている原因を説明できる.彼らは水深が一定であるモデルと変化するモデルを用いて, 鉛直粘性係数1cm2s-1の場合, それぞれ650×106m3s-1と32×106m3s-1の流量を得ている. 高い流量は主にA.C.C.の幅が大きくなることによって生じる. 一方, 低い流量は流れの幅が細くなって蛇行することにより (A. C. C. の両側で生じる摩擦による) 水平渦粘性が増加し, さらに風による応力の入力が一定水深に対するほとんど帯状流の流れの場合より小さくなることによって生じる.付記では地衡流を与えて海底の摩擦応力の大きさを正しく推定するための海底境界層の力学を考察した. さらにその理論をフロリダおよびサン・ディエゴ沖の海峡における海底境界層内の流れの最近の観測結果と比較した.