著者
幡野 敦 黒田 真也
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.37-45, 2018 (Released:2018-12-29)
参考文献数
28

近年,細胞内で分子活性を計測するオミクス技術が次々と開発され,オミクス研究はこれまでの網羅的解析以上に多様な付加価値を持つようになった.一方でこれらのオミクスデータをどのように解析するかに関して明確な指針はなく,研究者それぞれが試行錯誤の末,データから新たな知見を見出すことが一般的である.そこで我々はオミクスデータ解析の一つの指針として多階層生化学反応ネットワークの再構築を行うトランスオミクス解析を提案している.トランスオミクス解析では複数のオミクスデータをデータベースに基づいた事前知識により統合することで多階層生化学反応ネットワークを再構築し,生化学反応の数理モデルにより反応網羅的にその特性を明らかとする.本稿ではトランスオミクスの概念を示し,実際にトランスオミクス解析に有用なプロテオミクス技術とそのメリット・デメリットについて紹介する.