著者
平井 克亥 柳川 久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.142-147, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

北海道十勝平野の農耕地景観に営巣するハイタカAccipiter nisusの営巣木および営巣林分の特徴を調べた.調査は2007年~2010年の間に確認した31の営巣木および営巣林分(営巣木を中心とした0.1 haプロット)と営巣に利用されなかった37の林分(非営巣林分)を比較した.その結果,ハイタカが営巣木および営巣林分の樹種にもっとも多く利用したのはカラマツLarix kaempferiであった.しかし,営巣林分と非営巣林分との比較では,常緑針葉樹への選好性が示された.営巣した林分と非営巣林分の植生構造の比較の結果,ハイタカの林分は胸高直径および樹高ともにより小さく,低い下枝高,胸高断面積および立木密度は高い値を示し,ハイタカは構造的に林内空間の閉じた若齢林を選択していた.この常緑樹の若齢林へ選好性は,同所的に生息する捕食者のオオタカA. gentilisによる捕食リスクを低減するための選択の可能性,または採餌環境として適しているためかもしれない.
著者
平井 克亥 柳川 久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.166-170, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
20

北海道十勝平野において,ノスリButeo buteoの営巣パターンおよび営巣場所の特徴を調べた.調査期間中にノスリが営巣した場所は33ヶ所であった.ノスリは他の猛禽類の古巣にも営巣した.営巣木としてノスリにもっとも多く利用された樹種はカラマツLarix kaempferiであった.非営巣場所と比べて,営巣木は林縁からより離れた位置にあったが,それ以外の森林構造には営巣場所と非営巣場所違いはみられなかった.本研究の結果,ノスリの営巣場所の選好性は比較的弱く,このことが他種の古巣を利用した営巣や,カシワ林からカラマツ林へと主要な営巣環境をシフトすることを可能にしたと考えられた.その結果,十勝平野のノスリの営巣数は回復傾向にあるのかもしれない.