著者
奥津 哲夫 渡邉 興一 平塚 浩士
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

本研究では、「光による結晶成長制御が可能であることを示すこと」を目的とし、研究期間内に以下の実績が得られた。光で結晶成長させることが可能であるような系の探索を行った結果、1.有機結晶を用いた系分子性結晶であるアントラセンを用い、結晶が懸濁した溶液にパルスレーザー光照射を行った。アントラセン結晶が溶解し、同時に新たな結晶の出現と成長が観測された。レーザー一光子で結晶相の分子4〜5分子が溶液相へと溶解した。このため、結晶表面がパルス励起されると、飽和溶液中に分子が溶解し過飽和状態となり、結晶成長の駆動力を生じることが判明した。このことから、光により結晶成長制御を行うことが可能であることが示された。2.無機化合物結晶結晶を用いた系無機化合物として硫酸銅結晶を用いた。レーザー光照射を行うと、結晶は溶解するのみで新たな結晶の出現・成長は観測されなかった。36光子を吸収することにより一分子が溶解した。光照射を行いながら結晶成長を行ったところ、光照射により結晶成長は著しく遅くなることが判明した。このことから、光照射を行うと結晶表面の温度が上がり、溶解度が上昇するため、成長速度が遅くなることと解釈した。光照射を特定の面に行うことにより、その結晶面の成長を制御することが可能であることが判明した。3.結晶表面に吸着物質を吸着させ、光で剥離させることにより特定の面を成長させる試み硫酸銅結晶にゼラチンあるいはシアニン色素を吸着させ、結晶成長を抑制させた。この結晶にレーザー光を照射し、表面の吸着物質を剥離させた。この結晶を飽和溶液中に吊し、結晶成長させたところ、レーザー光を照射した面の結晶成長が観測された。