著者
平岡 昌樹
出版者
大阪市立生野特別支援学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

学生が指導を受けた2,3校の特別支援学校の体験内容を時系列でまとめたもの事例研究はあるが,特別支援学校で介護等体験の体験内容を類型化した研究は管見の限りほとんどない。本研究では,特別支援学校でどのような体験内容・学習内容が設定されているかを全国的にまとめ,その傾向等を分析する。また,受け入れ担当者が,体験内容や指導する学生,送り手である大学に対して抱く意識や特徴を明らかにする。全国の特別支援学校1049校(平成23年5月1日現在)から,「平成23年度全国特別支援学校実態調査(全国特別支援学校長会)」を使用し367校を無作為抽出し,サンプリング調査を実施した。調査は郵送による質問紙法によって実施した。質問紙並びに依頼文を抽出校に郵送し、「介護等体験を主として担当する方」に記入を依頼した。アンケートを送付した367校の内,計283校から回答を得た(回収率77.1%)。回答を得た特別支援学校の障害種別は,知的障害115校(44.1%),肢体不自由障害33校(12.6%),視覚障害16校(6.1%),聴覚障害20校(7,7%),病弱障害11校(4.2%),知肢併置校43校(16.5%),その他併置校23校(8.8%)であった。受け入れ学生が最も多かった学校は466人(東京都)であった。全国平均は72.0人であった。都道府県別に調査すると,最も多いのは東京都で平均252.9人,次いで京都153.0人,愛知150.8人,奈良148.0人,広島130.7人,大阪1252人となっており,首都圏や中京圏,近畿圏といった大学数の多い都府県であることが推測できる。体験の内容の結果から,ほとんどの学校で「児童生徒との交流」「授業の補助」など学生が子どもたちとできるだけ多くの時間過ごせるように工夫していた。また,「障害についての説明」など学生の障害理解,障害児教育の意識向上に資する目的の学習内容が設定されていた。介護等体験実施からすでに15年近い時が立ち,特別支援学校の学生の受け入れ体制が確立してきているようである。「体験内容の改善の必要性」を感じているという学校は,調査対象校の2割弱に過ぎなかった。「介護等体験は教員になった時に役立つか」といった体験の効果についての項目においても,「そう思う」という回答が8割以上であり,介護等体験が学生に効果があるという回答を得た。一方で,「学生の姿勢・マナー」や「大学側の事前指導」に対する要望がおよそ半数の学校からあげられた。