著者
横川 智子 佐々木 七恵 平岡 晃 立石 清一郎 堤 明純 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.163-173, 2012-09-20 (Released:2012-10-24)
参考文献数
77
被引用文献数
2 2

目的: 健康診断結果をもとにした職務適性評価および就業上の措置に関する海外の文献を調査分析し,就業上の措置に関する明確な判断基準や数値基準に関わる情報や職務適性評価の過程における手順や留意点を見出すことを目的とする. 方法: 職務適性に関連するキーワードをもとにPubMedで検索して英文の文献を入手し,調査対象となった論文の国,健康診断のタイミング,職務適性評価の対象疾患,対象職業,対象者の健康度による分類,職務適性評価の目的や基準における考え方,職務適性評価の決定プロセスについて文献を整理し分析した. 結果: 条件に該当した英語論文は70件であった.これらの文献では,職務適性評価に関連して以下の2点に着目していた.1) 労働者自身および周囲の労働者,公共に対する安全の確保およびリスクの回避,2) 軍人や消防士のような業種における危険に対応できる能力.さらに障害者や有病者については,事業者の責任としての合理的配慮という考え方が求められていた.各論文中で述べられている職務適性評価の決定プロセスについては,どの国においても,1)職務分析,2)障害・疾病によって生じている職務に関連した制限・リスク評価といった労働者分析,3)障害者と事業者との話し合いによる合理的配慮の提示および実現可能性や有効性,コスト等に基づく評価からの必要な就業配慮の選択,4) 1)~3)の内容と各分野の専門家の意見をもとにした職務適性判断という流れが示されていた. 考察: 本調査により,医師による健康診断結果をもとにした就業上の措置に関する意見の明確な判断基準や数値基準に関わる情報を見出すことはできなかったが,労働者の健康度と職務の要求度および危険度を照合した上で職務適性を評価するプロセスを明らかにすること,就業上必要な意見を述べる技術力が医師に求められていることが改めて確認された.さらに障害者や有病者の職務適性評価に関して,日本においても事業者の義務としての合理的配慮について注目されることが予想される.健診事後措置においては判断基準や数値基準に頼るだけでなく,意見を述べる際の手順や留意点を明確にする必要がある.さらに就業上の意見を述べなければいけない医師には,職務適性評価を行う十分な技術が求められることが示唆された.
著者
古屋 佑子 高橋 都 立石 清一郎 富田 眞紀子 平岡 晃 柴田 喜幸 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.54-62, 2016-03-20 (Released:2016-06-07)
参考文献数
20
被引用文献数
8 9

目的:疾患を持つ労働者への就業支援において,労働者本人,治療医,企業(産業保健スタッフ)間の連携は欠かせないが,どのような要因が関係者の連携を促進または阻害するのか,その詳細は明らかではない.本研究の目的は,産業医と治療医の連携場面に着目し,治療医のどのような行動が産業医による就業配慮を促進・阻害するのか明らかにすることである.方法:産業医科大学の卒業生である産業医のうち,4年間の卒後修練コース修了者および産業医実務研修センターの教員・元教員計43名に対して自記式質問紙調査を実施した.質問紙では,個人属性(年齢・産業医経験年数・臨床経験年数など)と,職場での就業配慮に役立った治療医の行動(良好事例),結果的に妨げとなった行動(困難事例)を質問し,事例は自由記述で回答を得た.事例の内容は,KJ法を参考にして質的に分析した.結果:2013年12月17日~2014年1月18日までの調査期間中に,33名から回答(有効回答率76.7%)があった.回答者の平均年齢は37.4±6.1歳,60.6%は専属産業医であった.良好事例は32例,困難事例は16例提供された.連携のタイミングは全48例中35例(72.9%)が復職時であった.就業配慮に影響した治療医の行動の内容は,「治療経過および今後の治療計画の提供」,「健康情報の提供」,「復職・就業配慮の妥当性」,「提供情報の一貫性」,「文書の発行」,「産業医の存在を意識したコミュニケーション」「本人が知らない情報の提供」の7種に大別された.考察:本研究により,治療医のどのような行動が産業医の実施する就業支援に関連しているか,明らかとなった.また,産業医と治療医との情報共有の必要性も,明確にすることができた.調査対象者から寄せられた良好事例と困難事例は互いに表裏の関係にあり,良好事例に準じた行動を治療医がとることで,円滑な情報共有および就業配慮に結びつく可能性が高いと考えられた.