著者
古屋敷 明美 平岡 正史 佐々木 秀美 紀 成子 武井 功子 長吉 孝子 山下 典子 河野 寿美代 金子 道子 森川 晴美 山崎 弘子
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.42-53, 2004-03-27

音楽が生体とこころに良い結果を及ぼすことは衆知の事実であり,この影響について生演奏を聴いた前後の血圧・脈拍・皮膚表面温度・こころの変化によって明らかにすることを目的とした。対象は本学の公開講座「音楽による癒し」のサックスとピアノ演奏・歌唱を聴いた参加者。自動血圧計による演奏前後の血圧・脈拍を計測した24名,サーモグラフを用いて演奏経過による顔面皮膚表面温度を計測した5名,調査に回答した78名である。結果は,演奏を聴いた後が演奏前より血圧が低下は約70%,脈拍数の減少約90%であった。収縮期血圧の12.0mmHg低下と脈拍数8.7回/分減少とに有意差があった。演奏前収縮期血圧が高い者は血圧低下が大きい。皮膚表面温度の変化は,前半と後半の演奏とも皮膚表面温度が約2℃上昇していた。こころに及ぼす影響は,演奏前にこころの緊張状態にある者が約半数を占め,苛立ち>不眠>憂〓>苦痛>不安の順であった。演奏後に気持ちが変化したと答えた者が8割あり,その変化はリラックスできた,楽しかった,感動した・感銘を受けた,心が落ち着いた,気持ちがほぐれた,心豊かになった,肩こりが軽くなったなどであった。生演奏を聴くことで血圧・脈拍が低下し,体温が上昇し,こころの緊張が緩和されることが実証できた。