著者
戸渡 敏之 久野 雅彦 鈴木 歩美 天野 直樹 杉山 良信 平嶋 純代 赤津 嘉樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第23回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O021, 2007 (Released:2007-11-02)

【背景】勤労者を対象とした痛みに関する調査では、腰痛の有訴率は高く社会問題化されてきた。この対策として、中央労働災害防止協会において「職場における腰痛予防の推進について」が通達され、職業性腰痛予防への取り組みが実践されている。一方、我々理学療法士(以下、PT)も、対象者のトランスファー介助や中腰姿勢など腰部にストレスのかかる動作を行う機会も頻繁にあり、腰痛経験者も多いと推測されるが、不明な部分も多い。そこで今回PTに伴う腰痛に関する予備的調査を実施し、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は、静岡県士会教育局研修部が平成18年度に開催した計3回の研修会参加者である。方法は、開始時に無記名式のアンケート調査票を配布し、終了時に回収した。調査内容は、年齢などの基礎データと腰痛に関する情報とした。【結果】有効回答数は138名であり、腰痛経験あり(以下、LBP+群):115名(83.3%)、腰痛経験なし(以下、LBP-群):23名(16.7%)であった。LBP+群では、就職後の腰痛経験は、就職後1年以内:83名(60.1%)、2年以内:17名(12.3%)、3年以内:4名(2.9%)であり、腰痛を感じる内容は、トランスファー:73名(52.9%)、立位訓練時:29名(21%)、座位訓練時:24名(17.4%)、歩行訓練時:18名(13%)などであった。PT業務との関連性に関しては、非常にある:26名(18.8%)、少しある:72名(52.2%)、ない:4名(2.9%)などであり、困難な動作については、1時間程度の座位:34名(24.6%)、立ち上がり:8名(5.8%)、中腰の姿勢:72名(52.2%)、立位の持続:40名(29%)、重量物の挙上61名(44.2%)であった。また全対象(n=138)において、平均年齢:26.4±5.3歳、性別:男性;79名(57.2%)女性;59名(42.8%)、腰痛体操の実施:34名(24.6%)、柔軟体操・ストレッチの実施:73名(52.9%)、筋力トレーニングの実施:36名(26.1%)、ボディメカニクスの利用:99名(71.7%)、装具着用:17名(12.3%)となっており、これらの項目でLBP+群とLBP-群間に有意差はなかった。【考察】調査結果では、PTの8割以上が腰痛を経験しており、その多くは就職後1年以内で発症し、7割以上がPT業務との関連性を感じていた。以上よりPTに伴う腰痛有訴率の高さを再認識し、各施設において新規採用PTを対象とした腰痛予防に関する労働衛生教育の実施、及び再発防止や自分の腰を守る為の自己管理を各自で実践していくことが対応策になると示唆される。さらに今後の課題として、快適な職場環境の構築に向けて電動ベッドやリフトの導入など個々の施設特性を考慮しながら、PTの身体的負担軽減を目標とした作業管理を模索していく必要がある。