著者
平川 和貴 岡崎 茂俊 村上 浩雄 金山 尚裕
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.349-355, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

光線力学的療法は,低侵襲ながん治療法として優れているが,光増感剤の改良により,がん選択性と治療効果をさらに向上できる可能性がある.従来のポルフィリン光増感剤は,一重項酸素生成による生体分子の酸化損傷を作用機序としているが,低酸素条件でも活性を維持できる電子移動機構に着目し,ポルフィリンのリン錯体による生体分子の光損傷を評価した研究例を紹介する.ポルフィリンのリン錯体は,DNA,タンパク質(酵素を含む),葉酸,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを可視光照射下,電子移動を介して酸化損傷した.さらに,ポルフィリンのリン錯体の中には,培養細胞レベルでがん選択性を示す誘導体が確認された.また,担癌マウスによる実験で高い腫瘍選択性を示す分子も明らかになった.