著者
箕輪 真一 平木 陽一 滝川 弘志
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.21-31, 1975-01-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
27

小・中学生1461名について皮厚 (腹部) を計測し, ローラー指数を求め, 皮厚とローラー指数の年令推移や分布状況を考察し, さらに両者が肥満の指標として如何なる意義を有するかを検討し, 次のような結果を得た.(1) 皮厚の平均値, 中央値は男女共に年令が進むにつれて増加し, 特にこれは10才以後において著しい.また皮厚は男より女の方が大きく, その差は年令とともに増大する.(2) 皮厚の分布は双峯ないし三峯の分布を示した.すなわち, 男女共 5~6mmを中心とした第 1 ピークは6~9才で最高, 10~11mmを中 心とした第2ピークは12~14才で最高を示し, 15~16mmを中心とした第3ピークも13~14才で出現する傾向がうかがわれた.なお, この分布も大きい方に著しい歪みを有し, ちらばりは極めて大きい.(3) ローラー指数の平均値, 中央値は男女共に6才→9才と漸減し, その後は男では14才まで殆んど変化ないが, 女では14才まで漸増の傾向にある. 分布は6~7才ではほぼ正規分布に近いが, 8才以後は年令が進むにつれて大きい方に歪みが増大して非対象分布となる. なお分布のピークは男女共6才→12才頃まで一律に小さい方に移行し, 12才でほぼ固定化, またやや大きい方に移行する.(4) 皮厚と体重は高い相関関係にあり, しかもこの関係は身長の影響を除外しても同様である. また皮厚とローラー指数も高い相関関係にあり, 特にこの傾向は年令が進むにつれて著しくなる.(5) 肥満判定にあたっては, 皮厚とローラー指数のそれぞれの特徴を考慮する必要があり, 皮厚とローラー指数を組合せて肥満を判定することが種々の不合理を解消し, より適切であるという見解を得た.具体的には, 皮厚 (腹部) 15mm以上でローラー指数 160以上を肥満とする.但し, 単独に皮厚20mm以上あればローラー指数が160未満でも肥満とし, またローラー指数が160以上でも皮厚が15mm未満なら肥満から除外してもよいであろう. なお, これらの点に関する詳細は今後の検討にまちたい.