著者
小林 稔弘 坂根 純奈 平松 昌子 川口 佳奈子 恒松 一郎 渡邉 千尋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.838-843, 2022 (Released:2022-11-30)
参考文献数
13

被包型乳頭癌(EPC)は2012年WHO分類で新規に分類されたpapillary lesions IBのまれな悪性病変である.当院で経験したEPC8例を報告する.年齢中央値66.5歳.主訴は腫瘤4例,腫瘤観察中3例,他疾患検査中1例.マンモグラフィーは全例カテゴリー3以上.超音波で混合性6例,充実性2例.腫瘤径は平均5.1cm.7例の針生検は全例悪性.乳房切除術4例,部分切除術4例.病理で浸潤あり4例.ホルモン陽性6例,HER2は浸潤例全て陰性.Ki-67は浸潤例3例で14%以上であった.部分切除例に放射線,ホルモン陽性5例に内分泌,1例に化学療法を行った.EPCは高齢傾向で,浸潤例でも浸潤癌に分類されるものよりは予後良好とされるが,自験例では40歳台も3人おり必ずしも高齢傾向とは言えず,急速増大例が目立つことや,増殖活性も浸潤例での高値も見られ,予後に留意すべき症例があることも示唆された.
著者
大関 舞子 平松 昌子 河合 英 李 相雄 徳原 孝哉 内山 和久
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.57-62, 2013 (Released:2013-07-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2 4

症例は68歳,男性.2003年中咽頭癌に対して化学放射線療法を施行され,完全寛解が得られた.2011年に新たに食道浸潤を伴う下咽頭癌を認め,食道抜去による咽頭喉頭食道全切除,胃管再建術を施行した.術後4日目より両側胸水貯留を認め,胸管損傷によるリンパ漏と診断した.胸腔ドレナージ施行後,胸水は漸減したが,その後リンパ液は腹腔内へ流出し,大量の乳糜腹水の貯留をきたした.完全静脈栄養に転換するも軽快せず,術後22日目よりオクトレオチドの持続皮下注およびエチレフリンの持続静注を開始した.投与開始2日後には腹囲の減少を認め,14日後には腹水は完全に消失した.オクトレオチドはソマトスタチンレセプターに結合することにより,またエチレフリンは交換神経α1作用により,胸管平滑筋の収縮をもたらすとされている.術後リンパ漏は治療に難渋することが少なくないが,両者併用は保存的治療のひとつとして有用と考えられた.