- 著者
-
大関 舞子
平松 昌子
河合 英
李 相雄
徳原 孝哉
内山 和久
- 出版者
- 日本臨床外科学会
- 雑誌
- 日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.1, pp.57-62, 2013 (Released:2013-07-25)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
2
4
症例は68歳,男性.2003年中咽頭癌に対して化学放射線療法を施行され,完全寛解が得られた.2011年に新たに食道浸潤を伴う下咽頭癌を認め,食道抜去による咽頭喉頭食道全切除,胃管再建術を施行した.術後4日目より両側胸水貯留を認め,胸管損傷によるリンパ漏と診断した.胸腔ドレナージ施行後,胸水は漸減したが,その後リンパ液は腹腔内へ流出し,大量の乳糜腹水の貯留をきたした.完全静脈栄養に転換するも軽快せず,術後22日目よりオクトレオチドの持続皮下注およびエチレフリンの持続静注を開始した.投与開始2日後には腹囲の減少を認め,14日後には腹水は完全に消失した.オクトレオチドはソマトスタチンレセプターに結合することにより,またエチレフリンは交換神経α1作用により,胸管平滑筋の収縮をもたらすとされている.術後リンパ漏は治療に難渋することが少なくないが,両者併用は保存的治療のひとつとして有用と考えられた.