著者
岡崎 仁昭 長嶋 孝夫 佐藤 英智 平田 大介
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

【目的】スタチン類はHMG-CoA還元酵素抑制によるコレステロール低下作用以外にも様々な多面的効果(pleiotropic effect)を持ち、近年、免疫抑制作用を有することが注目されている。我々はスタチン類の免疫抑制作用の機序をアポトーシス誘導作用の観点から研究を進め、脂溶性スタチンのフルバスタチンは活性化T細胞と培養RA滑膜細胞に対してアポトーシス誘導能を有し、その機序としてprotein prenylation阻害に基づくことを見出した。今回はスタチン類がループスモデルマウス(MRL-lpr/lpr)に対して治療効果を示すか否かを検討した。【結果】既に自己免疫病を発症している生後4か月齢のMRL-lpr/lprマウス計60匹をコントロール群、フルバスタチン投与群(10mg/kg)、副腎皮質ステロイド投与群(10mg/kg)の3群に分け、週3回腹腔内継続投与した。(1)投与開始4か月後の生存率:コントロール(C)群(50%)、フルバスタチン(F)投与群(55%)、副腎皮質ステロイド(S)投与群(90%)(2)尿所見:C群1.3±0.4、F群0.4±0.2、S群0.6±0.2(3)血清抗ds-DNA抗体価(EU):C群62.9±24.9、F群178.6±88.6、S群17.7±5.3(4)血清INF-γ(ng/ml):C群45.1±12.7、F群34.4±5.7、S群16.0±3.9【考察】今回のフルバスタチン投与実験(投与量と期間)では蛋白尿減少作用を認めたが、長期的生存率は上昇させなかった。血清抗ds-DNA抗体価はフルバスタチン投与群では逆に上昇傾向であった。スタチンには薬剤誘発性ループスの症例報告もあり、全身性エリテマトーデス(SLE)患者に投与する場合には注意を要すると考えられた。【臨床への応用】リウマチ膠原病患者は動脈硬化を合併しやすいことが報告されている。スタチン類がその抗動脈硬化作用に加えて、免疫調節作用をも有していれば、リウマチ膠原病に対する新たな治療薬となり得ることが期待される。