著者
平田 郁恵
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本期間中には,回路素子として前期間に作製したトランジスタの動作特性の解明を行った.具体的には,自己組織化単分子膜の共吸着によって作製した自己組織化単分子膜(self-assembled monolayers; SAM)の表面形状と電位を測定し,トランジスタ特性の変化と比較した.また,共吸着されたSMA上の有機半導体の結晶構造の変化を観察した.まず,共吸着されたoctylphosphonic acid(HC8-PA)とperfluorooctylphosphonic acid(FC8-PA)の表面形状と電位をKFMによって観察した. FC8-PAの混合比であるχが大きくなるにつれ表面電位は平均的に上昇した.しきい値電圧の変化はビルトイン・ポテンシャルによって誘起される固定電荷をもとに考えるモデルに従うことがわかった.また,χが小さくなるにつれ,絶縁膜表面が平滑化されることがわかった.この結果は,SAM混合比と絶縁膜表面のトラップ密度との関係とも整合性がある.すなわち,FC8-PAの増加によって,表面の平坦性に起因するトラップ密度が減少したと考えられる.次に,共吸着したSAM表面に有機半導体であるdinaphtho[2,3-b:2’,3’-f]thieno[3,2-b]-thiophene(DNTT)を熱蒸着し,その結晶構造についてXRDを用いて観察した.その結果,混合比を変えることによって,特にb軸方向の結晶面間の増加が顕著となることがわかった.DNTT結晶でホール移動度について最も実効的であるのがa軸,次にb軸である.トランジスタとしての移動度の変化は,これに起因するものであると考えられる.