著者
平良 柾史 平良 柾史
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学語学文学論集 (ISSN:03877957)
巻号頁・発行日
no.36, pp.p33-51, 1991-12

1925年に出版された Cather のThe Professor's Houseは、科学の隆盛に裏打ちされた物質主義が人間の生き方に強いインパクトを与えた20世紀初期の社会を如実に反映した作品となっている。物質主義に抵抗しながらもその潮流に流され疎外されていく St. Peter 教授。物質主義にどっぷりとつかり互いに憎しみ、敵意さえ抱く St. Peter の家族や大学の同僚たち。The Professor's House は、物質主義に毒された人々が互いに真のコミュニケーションをもちえず疎外されていく悲劇的状況を描いた作品といえよう。しかしながらこの作品では、物質主義という外的要因に加えて、内的要因、すなわち人間の内面に潜む罪を犯しがちな人間のもって生まれた弱さ(human flaw)が作品の登場人物たちの行動や生き方を規定し、外的要因以上に、内部から登場人物たちをコミュニケーションの欠如した疎外状況に落し込んでいるかと思われる。この小論では、人間の内面に潜む弱さ(human flaw)を七つの大罪-the sins of pride, envy, avarice, gluttony, wrath, sloth, lust-に起因するファクターとしての軌軸でとらえ、それぞれの大罪がどのような形で登場人物たちの行動に現れているのかを分析してみた。